2014 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム構造の位相転換が担うゲノム進化へのインパクト
Publicly Offered Research
Project Area | Correlative gene system: establishing next-generation genetics |
Project/Area Number |
26113719
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金 鍾明 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90415141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 植物ゲノム / トランスポゾン / ヒストン修飾 / 環境ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
エピジェネティックな制御を介したヘテロクロマチン形成とゲノム高次構造のダイナミックな変化は、ゲノムの維持・再編・進化に直接影響を及ぼすと考えられる。シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素Hda6は、植物ゲノム上のトランスポゾン発現抑制に機能する。hda6異変株では、ヘテロクロマチン領域の維持機構の崩壊により特定のレトロトランスポゾン群が再活性化し、ゲノムワイドに増幅とジャンプを繰り返すことで、ゲノムサイズが極端に増大することが示唆されている。 これまでに、シロイヌナズナヒストン脱アセチル化酵素Hda6のゲノム維持機構への関与を明らかにするため、4つの独立単系統化したhda6変異株系統を作成した。これら植物体は世代を経るごとに、形態的な異常が強まることが観察された。5世代に渡り継代した後、2世代目および5世代目について個体別の高速シーケンサーを用いてゲノムシーケンスを行った。その結果、hda6変異株におけるレトロトランスポゾンの転移、増幅現象は5世代では固定化せず、更に動き続けることが示唆された。現在、増幅するトランスポゾンが更に何世代を経て固定化するのかを明らかにするため、各単離系統について10世代目までの種子を得ている。 ゲノムの位相転換に関わるエピゲノム状態の変化を同定するため、Hda6機能欠損により不安定化する植物のゲノム領域に着目し、遺伝子抑制やヘテロクロマチン形成に関与するヒストンH3K9me2修飾の変化を、高速シーケンサーを用いてChIP-seq法より同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独立単系統の継代化と高速シーケンサーを用いた解析法の確立により、目的するゲノムシーケンスの変化を容易に追うことが可能となった。また、ヘテロクロマチンの局在部位を限定するヒストン修飾のゲノムワイドな同定にも至っており、来年度に向けてさらに大きな成果を得るための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
hda6異変株に見られるゲノムサイズの増加が、一世代の間に「どれくらいのスピード(増加率)」で、「ゲノム上のどこの位置へ」拡散していくのかを調べるため、今後、分離した単系統を10世代以上自殖させ、hda6異変株の世代の異なる種子を得た。今後はこれら植物体に対して、高速シーケンサーを用いたゲノムのリシーケンスを行うとともに、ChIP-seq解析等により、世代を越えたエピゲノム状態の変化とゲノム塩基配列の増加パターンを同定する。また、環境ストレスによるゲノム維持以上の影響を調べるため、低温または乾燥ストレス下でのエピゲノム状態の変化をChIP-seq法より同定する。
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Research Products
(3 results)