2014 Fiscal Year Annual Research Report
体外精子形成を目指した生殖細胞間架橋関連因子の同定および細胞連結増殖への影響解析
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms regulating gamete formation in animals |
Project/Area Number |
26114506
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩森 督子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10711509)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテオミクス解析 / 生殖細胞間架橋 / 免疫組織化学的解析 / 抗体作製 / 網羅的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子形成において生殖細胞間架橋(ICB) 関連因子のプロファイリングを網羅的に行い、候補因子を培養系で機能解析することにより、ICBを介した低分子輸送解明を目標に、26年度は以下の実験を予定していた。1)ICBを濃縮精製し、プロテオミクス解析によりICB関連タンパク質、RNAシークエンス解析を用いてICB関連RNAのプロファイリングを行う。2)1で同定された候補タンパク質に対する抗体を購入・作製し免疫染色を行い、ICBとそれ以外に局在するタンパク質を同定する。 実際には、まず1、2、3、8週令マウス精巣から本研究の要であるICB濃縮精製を行った。手法を改良し全週令でICB濃縮精製に成功した。これらを用いてプロテオミクスを行った。同サンプルは複合タンパク質が立体構造を維持しており、さらに、抽出RNAが良質維持されていた事から、ICBもRNAを保持している事が予想された。しかし、ICB濃縮精製法は1kb以下、特に40bp以下のsmall RNAsをも大量に濃縮している事が判明し、同定したいICB関連RNAがこれらRNAsデータに埋もれる可能性を考慮し、ICB濃縮サンプルを直接用いたRNAシークエンスは計画を中断、追加実験により再検討が必要と判断した。 また、8週令マウスICB濃縮精製物で精子混入が確認されたため、精子産出前の5週令マウスに変更し、再度、ICB濃縮精製・プロテオミクス解析を行った。二度とも既知ICBタンパク質を含む信頼あるデータが得られた。プロテオミクスデータ解読とともに抗体購入・作製、免疫染色により新たな移行性ICBタンパク質が見つかっており、これらに関して27年度以降に予定していたタンパク質免疫沈降(IP)およびRNA 免疫沈降(RIP) 解析を始めた。 27年度も引き続き、この一連の流れで候補因子同定を行い、培養系で機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ICB濃縮精製法の再検討とプロテオミクス解析を二度行なった事で、より精度の高い解析結果が得られた。タンパク質の質量分析LC-MS/MS解析の感度が進んだ事とデータベースが充実したために、得られたデータ量が予想より遥かに多く、データ処理に時間を要する事となった。しかし、興味深い候補タンパク質が見つかった時点で抗体による免疫組織科学染色解析を進めているため、プロテオミクス解析結果のデータ処理に時間がかかる事に問題はない。 ICB濃縮精製物のRNAシークエンスを行う予定で、ICB濃縮精製物からのRNA抽出、Nano Dropでの測定、バイオアナライザーを用いた品質チェック、40bp以下のRNAの有無を調べるためにFluorometerでの解析、視覚的にはDNA処理した後のICB濃縮精製物をSYBR goldで染色し蛍光顕微鏡下で観察するなど検証実験を重ねた。その結果、この濃縮精製物にはICBと局在を共にしないRNA、特に40bp以下を含むSmall RNAが多く濃縮されていることが分かった。精巣のSmall RNA解析としては興味深いが、今回の研究ターゲットであるICB関連RNAが他のRNAの多さに埋もれる可能性を考慮し、ICB濃縮サンプルを用いたRNAシークエンスは一時断念することにした。代わりに平成27年度に予定してたIPとRIP解析の検討実験に移行した。予定より加速的に進行している事になるが、予定していた実験を省略した事を踏まえてこの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、プロテオミクス解析結果のデータ処理を行い、候補タンパク質に関しては抗体を用いた発現部位の同定を行う。この際、新規タンパク質など必要に応じた抗体の作製も行う。 平成26年度に既に行った局在部位解析でICB関連タンパク質であることが分かっているタンパク質に関しては、ICB濃縮精製物および精巣サンプルを用いて、タンパク質免疫沈降(IP)およびRNA免疫沈降(RIP)を行い、LC-MS/MSで複合タンパク質、RNAシークエンスで結合RNAを同定する。同定された結合RNAに関してはその他の結合タンパク質を同定する。結果が得られたタンパク質・RNAから順に体細胞で生殖細胞間架橋形成維持のキータンパク質であるTEX14と共発現し、細胞連結増殖における視覚的な観察や発現遺伝子の量的変化を解析する。変化が得られた候補タンパク質に関して初期培養細胞におけるノックダウン実験や、蛍光タンパク質とターゲット因子の融合タンパク質などを培養細胞に導入し動的な観察を試みる事が目標である。
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