2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNA再複製防止機構からのエスケープとゲノム再編
Publicly Offered Research
Project Area | Functions of non-coding DNA region for genome integrity |
Project/Area Number |
26114716
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 誠司 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教 (50263314)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA複製 / ゲノム安定性 / ゲノム再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムDNAは細胞増殖時には正確に複製・分配され、世代を超えて安定に維持されなくてはならない。しかし逆に、重複・転座といった染色体DNAの大幅な変化は、進化において大きな役割を果たす。したがって、生物は世代を超えて染色体を安定に維持していくことを保証する機構を備えると同時に、超長期的には、染色体改編のポテンシャルも併せ持つと考えられる。真核生物の染色体DNA複製は、各染色体上の特定の領域から開始する。細胞はゲノムの安定維持のために、一回の細胞周期につき複製起点の活性化を一度だけに限定する巧妙な制御機構(=Once per Cell Cycle制御)を備え、その制御の破綻はゲノムの不安定化を誘導する。我々は、通常は複製開始が起こらないG1期であってもOnce per Cell Cycle制御からのエスケープが超低頻度で起き、部位特異的なゲノム改編の原動力となる可能性を見出した。本研究では、①このような染色体改変の原動力となるような非コード領域・配列を同定し、その特徴を抽出することで、ゲノムの安定維持・改編に関わるメカニズムを理解し、さらに、②そのような領域が実際に過去のゲノムの改編に関わってきたかどうかを検証し、③染色体の構築原理や維持・変動機構との関係を理解することを目指している。平成26年度の研究では、分子メカニズムの側面からの解析を主に行った。相同/非相同組換えやDNA修復、チェックポイントといった染色体の安定維持に関わるような種々の因子の変異体を用いてOnce per Cell Cycle制御からのエスケープを誘導したところ、これらの因子の変異の有無にかかわらず、生存率にはほとんど影響がなかった。このことはOnce per Cell Cycle制御からのエスケープで誘導されるDNAダメージについて、これまで知られているDNA修復系は無力であることを示しており、驚くべき結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに成果を得られつつある。 平成26年度の大きな成果としては、「研究実績の概要」欄に記したように、DNA修復に欠損を持つ種々の変異体の有無にかかわらず、Once per Cell Cycle制御からのエスケープで誘導される細胞生存率の低下には影響が見られないという、おどろきの結果が得られている。このことは、DNA複製制御とゲノム安定維持を考察する上で、新たなパラダイムの提出につながる可能性がある。一方、染色体改変の原動力となるような非コード領域・配列の抽出は計画より若干遅れが出ている。これらの事情を勘案すると、プロジェクトは全体的としてはおおむね順調に成果を得られていると判断できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記したようなメカニズム的側面の解析をさらに進める一方、①染色体改変の原動力となるような非コード領域・配列の同定とその特徴の抽出、さらに、②そのような領域が実際に過去のゲノムの改編に関わってきたかどうかを検証してゆくというプロセスを加速させ、期間内での研究完了を目指す。
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Research Products
(8 results)