2014 Fiscal Year Annual Research Report
神経と多臓器間で制御される温度適応メモリーの解析
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of memory dynamism elucidated from a diversity of learning systems |
Project/Area Number |
26115525
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 准教授 (00402412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 線虫 / C. エレガンス / 温度適応メモリー / 温度応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の温度適応に関わるメモリーの解明に向け、シンプルな実験動物である線虫C. エレガンスを実験系とし、神経系を含む多臓器間のメモリーネットワークを分子生理レベルで理解することを行っている。具体的には、C. エレガンスの温度適応に関する記憶現象を定量化し、従来の分子遺伝学と最新の光技術を駆使して、記憶に関わる関連遺伝子の同定と神経活動の定量化から、メモリーの基本原理の解明を最終的にめざしている。 本年度は、線虫の温度適応に関するメモリーの実験系をより詳細に構築した。線虫の低温適応とは、25℃で飼育された線虫が、2℃に置かれると死滅するのに対して、15℃飼育個体は2℃でも生存できる現象である。この現象を詳細に捉え、メモリー構築にかかる時間と温度のパターンを定量化したところ、25℃で飼育した個体を、2-3時間だけ15℃に置くことで、2℃で生存できることが見つかった。つまり、2-3時間で体内の温度メモリーが変化したと考えられる。この温度記憶時に発現変動する遺伝子群をDNAマイクロアレイ解析から同定し、低温適応への関与を測定したところ、グリア細胞のミエリン鞘を構築するスフィンゴミエリン合成酵素などの関与が示唆された。また、哺乳類の記憶制御因子であるCREBが温度適応記憶に関与することが示唆された。生体制御の遺伝子システムは、線虫からヒトまで共通点が多いため、線虫で明らかとなった生体システムは、ヒトの疾患研究にも役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した実施計画をおおかた進められたと考えられる。温度適応メモリーの解析実験系を立ち上げることができ、またこれらを支える機構について新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度まで、線虫C. elegansにおける温度適応において、25℃で飼育した個体を、2-3時間だけ15℃に置くことで、2℃で生存できることが見つかったことから、2-3時間で体内の温度メモリーが変化したと考えられる。この温度記憶時に発現変動する遺伝子群をDNAマイクロアレイ解析から同定する解析を継続する。さらに、昨年度に同定した、低温適応への関与を測定したところ、グリア細胞のミエリン鞘を構築するスフィンゴミエリン合成酵素などについては、変異体のレスキュー実験や発現細胞解析を行う。また、哺乳類の記憶制御因子であるCREBが温度適応記憶に関与することが示唆されたため、温度適応記憶におけるCREB機能細胞を細胞特異的レスキュー実験により明らかにする。同時に、CREB機能細胞の細胞活動を細胞内カルシウムイメージングで定量化する。記憶・学習は脳神経系の情報処理によるものだけではなく、神経系と他の組織を含めた多臓器間のネットワークによって形成される側面があるため、温度適応のメモリーにおいても、神経回路とその下流の組織間のネットワークの必要性をとらえる解析を進める。
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Research Products
(12 results)