2014 Fiscal Year Annual Research Report
構成論的アプローチによる収縮環の収縮機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Spying minority in biological phenomena -Toward bridging dynamics between individual and ensemble processes- |
Project/Area Number |
26115715
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮崎 牧人 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (40609236)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / アクトミオシン / 分子モーター / 細胞骨格 / 収縮環 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物細胞の多くは有糸分裂期になると細胞の形を丸く変化させ、赤道面に収縮環と呼ばれるリング状のバンドル構造を形成させる。収縮環は主にアクチン繊維とミオシン分子モーターから構成されており、アクトミオシンの収縮力で細胞膜をくびれさせることで細胞は分裂を行なう。初年度の平成26年度は収縮環が自己組織化される仕組みを調べるため、細胞から単離したアクトミオシンを細胞サイズの球状閉鎖空間(油中液滴)に閉じ込めた人工細胞系を開発した(Miyazaki, Chiba, Ishiwata, Protoc. Exch. (2015))。この人工細胞系を用いて、収縮環様のリングが自発的に形成されうるかを調査した。その結果、アクチンモノマー、ミオシンとアクチン繊維の束化因子を液滴に封入してアクチンを重合させると、「液滴サイズ<アクチン繊維の持続長」の条件を満たす場合は収縮環様のリングが自発的に形成されることを発見。アクトミオシン活性の空間制御シグナルが無いにも関わらず、リングは必ず赤道面に形成され、アクチン繊維に結合しているミオシン分子の密度の上昇によりリングは収縮した。これらの研究によって、収縮環形成における微小閉鎖空間の物理的寄与を明らかに出来たと考えられる(Miyazaki, Chiba, Eguchi, Ohki, Ishiwata, Nat. Cell Biol. (2015))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、細胞から単離・精製したタンパク質を細胞サイズの液滴に封入する技術を確立し、収縮能を持ったアクトミオシンリングを自己組織化させることに成功した。これらの研究によって収縮環の自己組織化機構における微小閉鎖空間の物理的寄与を明らかにすることができた。また、細胞サイズの油中液滴をリポソームに変化させる手法(界面通過法)を習得し、個々のリポソームのラメラリティー(膜の多重性)を顕微鏡下で計測する手法を開発。界面通過法で作製したリポソームは、90%以上の高効率で細胞膜と同じ単層の脂質二重膜から成っていることがわかり、モデル細胞構築に適したリポソーム作製法であることを示した(Chiba, Miyazaki, Ishiwata, Biophys. J. (2014))。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究によって、収縮環様のリング構造が自発的に形成される条件を明らにした。これらの研究成果を発展させ、平成27年度は収縮環の収縮機構の解明を目指す。収縮環のアクチン繊維は極性がランダムで長さも不揃いであることが知られている。そのような無秩序なアクチンバンドルがミオシンによってなぜ収縮できるのか、物理的な仕組みは未だに良くわかっていない。平成26年度の研究から、ミオシンの濃度だけでなく、その状態(ダイマーかオリゴマーか)によってアクチンリングの収縮が制御されることが示唆された。そこで、平成27年度は、平成26年度に確立したリポソーム作製法を用いてアクトミオシンリングを内包したリポソームを作製し、リングの収縮によってリポソームが変形する条件を探る。さらにアクトミオシンの相互作用を定量化し、無秩序なアクトミオシンバンドルが収縮できる仕組みの物理的理解を目指す。
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