2014 Fiscal Year Annual Research Report
マウス卵割期胚におけるNC比制御と核形態・クロマチン状態変化の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
26116505
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大杉 美穂 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00332586)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マウス / 卵 / 受精 / 前核 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞における核の形状や核と細胞質の体積比は、分化度や腫瘍の悪性度など、細胞の状態を反映する指標の一つとして長く利用されている。培養細胞や様々なモデル生物を用いた研究から、核の大きさに影響を与え得る要因として、内包する染色体の数(DNA量)、核内輸送の効率、細胞の大きさ(細胞質の量)などが報告されているが、核の大きさや形態の制御機構についての知見はまだ限られたものしかない。 本研究では、マウス前核期胚は(1)細胞はほぼ球形であり、細胞周期を経ても大きさがほぼ変化しない、(2)前核もほぼ球形である、(3)胚ごとの細胞、核の大きさのばらつきが少ない、(4)細胞質の吸引除去や2つの卵を電気刺激により融合することによる細胞サイズの改変が可能である、(5)単為発生、極体放出抑制、2つ以上の精子核の注入等により、細胞または核あたりの染色体数の改変が可能である、という特性に着目し、核の大きさと細胞の大きさ、及び、細胞あたり、または核あたりの染色体の数(核相)との間の相関の有無を検討した。 上記(4)の方法により、体積を通常の約半分~1倍および、2倍にした卵を用い、1nまたは2nを含む単一の前核を形成させた。その結果、前核の大きさは、内包するDNA量にはほとんど影響を受けないが、卵の大きさ(細胞質量)と高い相関を示した。更に、2つ以上の前核が存在する場合、細胞の大きさに対し、すべての前核の総体積または総面積が一定となることが示唆された。 また、雌性単為発生胚を用いた前核形成開始タイミング制御の分子機構についても解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室の温度制御の不備によりマウス胚を培養する培養装置の温度維持管理に困難が生じ、夏期の研究進捗に問題が生じたが、繰越申請をすることで計画は概ね実行できた。 また、大きさを変化させたマウス卵を用いた研究からは、想定通り細胞サイズによって核サイズが決定されることが明らかにでき、更に前核サイズは内包する染色体数(DNA量)にはほとんど影響を受けないことも明確にできた。このことから、雌雄の前核サイズの違いが生じるメカニズムを明らかにすることが、本研究の目的達成のよい足がかりになるという発想が生まれ、今後の実験方針が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
核の大きさが、細胞の大きさに依存して決まるメカニズムを明らかにする手がかりとして、マウス受精卵では雌雄の前核の大きさに差があり、雄性前核の方が常に少し大きいことに着目し、この差が生じる過程を詳細に観察、検討する。また、前核サイズを変化させた受精卵の発生過程を追い、核の形態や発生能との関連を明らかにする。
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Research Products
(5 results)