2014 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境での代謝リプログラミングを促す転写制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
26116702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 教郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20447254)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低酸素 / 転写制御 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞への酸素供給が低下すると、生命の存続を脅かす「低酸素ストレス」となる。そのため、生体は低酸素誘導性転写因子HIFを中心とした低酸素ストレス防御機構を備えている。低酸素応答機構では、赤血球産生や血管新生などに関連した遺伝子発現が誘導され、エネルギー産生経路はミトコンドリアに依存しない解糖系に切り替わる(代謝リプログラミング)。初年度の研究では、低酸素下での代謝情報を転写制御に伝達する分子メカニズムについて、HIFの抑制因子であるPHDの役割に着目して解析を進めた。 PHDは3つのアイソフォームが知られていることから、それぞれを肝臓特異的に欠損したマウスを樹立した。その結果、目立った表現型を示さなかった。そこで、肝臓で3つとも欠損したマウスを樹立したところ、重篤な脂肪肝を発症し、生後10週以内に死亡した。このとき、肝臓におけるHIF1およびHIF2の活性が著しく亢進していた。また、HIFの標的遺伝子群の発現が亢進しており、ミトコンドリアの機能低下と数的減少が観察され、肝臓での脂肪酸利用が傷害されていることが示唆された。 次に、HIFによる転写活性化の分子メカニズムを明らかにするために、培養細胞を用いた解析を行った。その結果、低酸素環境下で活性化したHIFは、一部の標的遺伝子のヌクレオソーム構造を変換させることにより、転写を誘導することを見出した。 現在、PHDアイソフォームを欠損した細胞を樹立し、PHDの役割とHIFによる転写誘導の分子機構解明を目指した研究に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に即して、HIFを通常酸素環境下で抑制する因子であるPHD1、PHD2、PHD3について、各遺伝子を肝臓特異的に欠損したマウスを樹立した。マウスの解析を行ったところ、HIFの恒常的な活性化が肝臓における脂質代謝に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。また、クロマチン構造変換におけるHIFの役割について、PHD阻害剤などを用いて明らかにすることができた。成果が順調に得られたため、その一部を論文にまとめ、投稿した。現在、リバイス対応中である。
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Strategy for Future Research Activity |
PHD-HIF経路による代謝と転写の制御メカニズムを明らかにするために、3つのPHDアイソフォームを様々な組み合わせで欠損した細胞株を樹立する。得られた細胞を用いて、代謝産物や転写産物の網羅的解析を行う。また、HIFがクロマチン構造を変換させることを見出したので、その分子メカニズムを明らかにする。そのために、HIFと相互作用するクロマチン構造変換因子の探索を行う。これまでに、いくつかの候補因子を同定しているが、同定された因子の機能解析を行う。とくに、a-ケトグルタル酸やNAD+などの代謝産物が各因子の活性に及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(7 results)