2014 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー代謝と転写制御をつなぐ新規ヒストンコードリーダーに関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
26116715
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西 英一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
Nardilysin (NRDc)は、主に細胞質に存在する可溶型の酵素で、明らかなシグナルペプチドを有さないが,未知の経路で細胞外に分泌される。一方、典型的な核移行、核外移行シグナルも有さないが,核と細胞質をシャトリングする。我々は最近NRDcの核内における機能、すなわち、1) NRDcが新規修飾特異的H3(H3K4me2)結合タンパク質であること、2) NCoR/SMRTコリプレッサー複合体と結合すること,3) PGC-1αと結合し、細胞・個体レベルにおける熱産生遺伝子転写制御に関わっていること、4) 同転写制御活性にNRDcの酵素活性が必要であること、を明らかにした。NRDcは既知のメチル化認識ドメインを持たない新しいヒストンコードリーダーであり、NRDc欠損マウスは、低体温、寒冷不耐性、糖代謝異常など多彩な代謝系表現型を呈している。この新規転写制御因子の、標的遺伝子プロモーター上での挙動を明らかにし,個体レベルの代謝制御にいかにつながっているのかを解明する。 当該年度には以下の成果を得ることができた。 1)抗体作製:クロマチン免疫沈降(ChIP)に使用可能な抗体を得るため、NRDc欠損マウスにリコンビナントNRDcを免疫し、新たに3クローンのモノクローナル抗体を作製した。これまでChIPに用いていたウサギポリクローナル抗体と比較して、より特異度の高い検出が可能になった。 2)ChIPシーケンス:野生型マウスの臓器(心臓、肝臓、脳視床下部)からクロマチンを抽出し、1)の抗体を用いてChIPシーケンスを行った。 3)NRDc酵素活性の転写調節機能における役割の検討: NRDc欠損マウス由来の線維芽細胞、脂肪前駆細胞の不死化を行い、これらの細胞に野生型あるいは不活性型NRDcを再導入した細胞(NRDc-/-*WT、NRDc-/-*E>A細胞)を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的、1) NRDcの転写スィッチング(抑制-活性化)機能の検討、2) NRDc酵素活性の転写調節機能における役割の検討、3) NRDcの転写調節機能が、個体レベルの代謝調節をいかに制御しているかを明らかにする、を達成するために、以下の進捗を得た。 前述したとおり、1)、2)を達成するために必要な抗体および細胞の作製に成功し、最も障壁が高いと考えていたChIPシーケンスの結果も得られたことから、研究は順調に進んでいる。一方、NRDc欠損マウスの糖代謝表現型の解析も順調に進んでおり、特に膵β細胞に特異的に発現している転写因子群とNRDcの機能的連関について、新たな知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) NRDcの転写スィッチング(抑制-活性化)機能の検討、2) NRDc酵素活性の転写調節機能における役割の検討: 当該年度に作製した、NRDc欠損細胞に野生型あるいは不活性型NRDcを再導入した細胞(NRDc-/-*WT、NRDc-/-*E>A細胞)の遺伝子発現解析から、酵素活性依存性あるいは非依存性に発現がレスキューされる標的遺伝子群を抽出する。一方、やはり当該年度に成功したChIPシーケンスのデータを解析して、NRDcがプロモーター、エンハンサー領域に存在する遺伝子群を抽出する。さらにNRDc欠損マウスの臓器レベルの遺伝子発現パターン、表現型における重要性も合わせて検討することで、NRDcの標的遺伝子群を絞り込む。絞り込んだNRDc標的遺伝子群の転写調節領域の特徴(主要転写因子、コアクチベーター、コリプレッサー構成タンパク質の結合、メチル化、アセチル化などヒストン修飾など)を、UCSC genome browserなど既知データベースを用いて検討。最終的に、特定の遺伝子転写調節におけるNRDcおよびNRDcの酵素活性の役割を、NRDc欠損細胞、NRDc-/-*WT、NRDc-/-*E>A細胞を用いて確認する。 3) 個体レベルの代謝調節におけるNRDcの転写調節機能の役割の解明: 膵β細胞特異的、肝細胞特異的NRDc欠損マウスを用いて、糖代謝制御におけるNRDcの臓器特異的な機能、特に臓器特異的転写因子群との機能的連関を明らかにする。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Deletion of nardilysin prevents the development of steatohepatitis and liver fibrotic changes2014
Author(s)
Ishizu-Higashi S, Seno H*, Nishi E*, Matsumoto Y, Ikuta K, Tsuda M, Kimura Y, Takada Y, Kimura Y, Nakanishi Y, Kanda K, Komekado H, Chiba T
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 9
Pages: e98017
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] AMAP1 as a negative-feedback regulator of nuclear factor-κB under inflammatory conditions.2014
Author(s)
Tien DN, Kishihata M, Yoshikawa A, Hashimoto A, Sabe H, Nishi E, Kamei K, Arai H, Kita T, Kimura T, Yokode M, Ashida N.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 4
Pages: 5094
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Nardilysin controls heart rate through the regulation of sinus node automaticity2014
Author(s)
Ohno M, Hiraoka Y, Nishi K, Saijo S, Sakamoto J, Chen P, Makiyama T, Kita T, Matsuura H, Kimura T, Nishi E.
Organizer
Cold Spring Harbor Meeting (Nuclear Receptors & Diseases)
Place of Presentation
Cold Spring Harbor, NY, USA
Year and Date
2014-10-28 – 2014-11-01
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[Presentation] ナルディラインジンはグルコース応答性インスリン分泌を制御する2014
Author(s)
西清人, 佐藤雄一, 大野美紀子, 平岡義範, 西城さやか, 坂本二郎, 陳博敏, 北徹, 稲垣暢也, 木村剛, 西英一郎.
Organizer
第46回日本動脈硬化学会学術集会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-07-10 – 2014-07-11
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[Presentation] ナルディライジンはPGC-1αを制御することで体温恒常性維持機構と適応熱産生を調節する2014
Author(s)
西城さやか, 平岡義範, 松岡龍彦, 大野 美紀子, 中村和弘, 松村成暢, 西清人, 坂本 二郎, 陳 博敏, 北 徹, 木村 剛, 西 英一郎
Organizer
第46回日本動脈硬化学会学術集会
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-07-10 – 2014-07-11
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[Presentation] Nardilysin is a critical regulator of glucose-stimulated insulin secretion2014
Author(s)
Nishi K, Sato Y, Ohno M, Saijyo S, Sakamoto J, Chen P, Inagaki N, Kimura T, Nishi E.
Organizer
Keystone Symposia (Emerging concepts and targets in islet biology)
Place of Presentation
Keystone, CO, USA
Year and Date
2014-04-08
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