2014 Fiscal Year Annual Research Report
核及びミトコンドリアにおけるFCoRのエピゲノム情報調節機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
26116724
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中江 淳 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (00344573)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | FCoR / Arx / Dnmt3a / 膵島 / pyruvate carboxylase / インスリン分泌 / DNAメチル化 / アセチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 膵島におけるFCoRのArx遺伝子のメチル化の分子メカニズムの解明 これまでFCoRノックアウトマウス(FcorKO)において、膵α細胞量が増大しており、α細胞のマスター遺伝子の一つであるAristaless-homeobox (Arx)遺伝子発現が有意に増加していたことを明らかにしていた。今回、膵α細胞株であるαTC細胞にFCoRを過剰発現したところ、DNAメチル化酵素であるDnmt3a発現が有意に増加し、Arx遺伝子プロモーター領域のメチル化が増加した。逆に、膵β細胞株であるMIN6細胞でFCoRをノックダウンさせるとDnmt3a遺伝子発現が有意に低下した。さらに、FcorKOの膵β細胞特異的にFCoRを過剰発現させたマウス(β FcorKO)では、膵島におけるArx遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化がFcorKOに比べ有意に増加していた。以上のことより、FCoRは膵β細胞において、Dnmt3aの発現誘導を介し、Arx遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化を調節することにより、α/β細胞量を調節しうると考えられた。 (2) 膵β細胞におけるpyruvate carboxylaseの生理的役割の解析 FCoRによるpyruvate carboxylaseのアセチル化の影響・生理的意義を解析する前に、pyruvate carboxylase自体の膵β細胞でのインスリン分泌における生理的意義を明らかにしなければならないと考えた。これまで膵β細胞特異的pyruvate carboxylaseノックアウトマウス(βPcxKO)の報告はない。私たちは、βPcxKOを作製し解析した。βPcxKOは、空腹時の高血糖を認めるものの、腹腔内ブドウ糖負荷試験での耐糖能にコントロールと差は認められず、インスリン分泌はむしろ亢進していた。さらに、大量ブドウ糖負荷試験、アルギニン負荷試験でのインスリン分泌も有意に増加していた。単離膵島におけるインスリン分泌量もβPcxKOではコントロールに比べ増加していた。今後、pyruvate carboxylaseの膵β細胞での生理的役割について引き続き検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)FCoRによるエピゲノム情報の変化による膵α細胞量調節―核内におけるFCoRの遺伝子発現調節メカニズムを明らかにする FCoR過剰発現により、Dnmt3a遺伝子発現が増加し、DNAメチル化を増強しうること、FCoRノックダウンにより、Dnmt3a遺伝子発現が低下することを明らかにした。FCoRがDNAメチル化酵素の発現調節にかかわりうることが明らかになった。FCoRとβ細胞特異的Foxo1ノックアウトのダブルノックアウトマウス(Fcor-Foxo1KO)では、耐糖能はさらに悪化し、α細胞量もさらに増加した。以上から、α細胞量におけるFCoRの作用はFoxo1を介していない可能性が考えられていた。今回、活性型Foxo1を細胞株において過剰発現させると、Arx遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化には変化は認められなかった。しかしながら、同プロモーター領域には種を超えて保存されているFOXO-responsive element (FRE)が認められ、ChIPアッセイにおいてFoxo1の結合が確認された。以上から、Foxo1はDNAメチル化を介さず直接Arx遺伝子発現に関わっている可能性が考えられた。 (2)ミトコンドリアにおけるFCoRの代謝調節メカニズムを明らかにする FCoRによるβPcxKOのアセチル化・活性調節の可能性の解析の前に、組織特異的、特に膵β細胞およびα細胞特異的なpyruvate carboxylaseノックアウトマウス(βPcxKOおよびαPcxKO)を作製・解析することを優先した。細胞レベルでpyruvate carboxylaseの機能を解析した報告はあるが、両ノックアウトマウスを使っての報告はなく、膵島におけるpyruvate carboxylaseの生理的役割は明らかにされていないからである。βPcxKOはすでに作製・解析が進んでおり、これまで報告されている以外の機能・生理的作用をうかがわせるデータが得られつつある。αPcxKOの作製・解析も開始されている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)FCoRによるエピゲノム情報の変化による膵α細胞量調節―核内におけるFCoRの遺伝子発現調節メカニズムを明らかにする FCoRのDnmt3a遺伝子発現調節メカニズムを明らかにすること、Foxo1のArx遺伝子発現への影響に焦点を絞る。具体的に、FCoRのDnmt3a遺伝子発現調節領域への結合の有無、結合部位の同定、結合蛋白の同定を目指す。 (2)ミトコンドリアにおけるFCoRの代謝調節メカニズムを明らかにする 引き続きβPcxKOおよびαPcxKOの解析を進め、膵島におけるインスリン分泌・グルカゴン分泌におけるpyruvate carboxylaseの生理的役割を明らかにする。さらに、FCoRによるpyruvate carboxylaseのアセチル化の検討を開始する。
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