2014 Fiscal Year Annual Research Report
体細胞初期化過程で核内受容体が代謝と転写環境に果たす役割の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Crosstalk of transcriptional control and energy pathways by hub metabolites |
Project/Area Number |
26116726
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川村 晃久 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (90393199)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 体細胞初期化 / 核内受容体 / 代謝 / 転写調節 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまで、人工多能性幹(iPS)細胞への初期化に関する基礎的研究を通じて、初期化過程で生じる多様な細胞集団の中からiPS細胞形成効率の高い集団(=初期化成功群)と低い集団(=初期化不成功群)を表面マーカーにより早期で選別することに成功した。これにより、これまで困難とされた、初期化過程で将来的にiPS細胞になる可能性の高い細胞に標的を絞った解析が可能となり、核内受容体を介した代謝の変化が、誘導早期のチェックポイントとしてiPS細胞への運命決定に極めて重要な役割を果たしていることを見い出した。 マウス胎児線維芽細胞からの4因子Oct4/Sox2/Klf4/cMycによる初期化誘導により、表面マーカーSca1、CD34の発現が誘導された。誘導早期の5日目において二重陰性分画からは効率的にiPS細胞コロニーが形成されるのに対して、二重陽性分画からはほとんどiPS細胞が形成されなかった。各分画における遺伝子発現をマイクロアレイあるいは次世代シーケンスにより網羅的に解析した結果、代謝経路のひとつ酸化的リン酸化を制御する遺伝子群の発現が亢進していた。これらの多くが核内受容体ERRとそのコファクターPGC1による制御を受けていることが判明した。 さらに、初期化成功群であるSca1/CD34二重陰性群では他の群と比べてERRPGC1の発現量が亢進していた。ERRやPGC1をshRNAによりノックダウンすることによりiPS細胞形成効率が著明に低下すること、酸化的リン酸化阻害薬を誘導早期に作用させることにおいてもiPS細胞性成功率が有意に低下することが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞表面マーカーを用いて初期化成功を予測する細胞群に焦点を絞って研究を進めることができた。その結果、iPS細胞形成に重要な細胞内代謝の変化の詳細と、これを制御する核内受容体とそのコファクターを同定することに成功した。マイクロアレイや次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析と、ノックダウンや阻害薬によるiPS細胞形成効率を評価する実験より、核内受容体とそのコファクターの初期化における新しい機能を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、初期化過程で核内受容体の発現や代謝が如何に制御されているかについて解析を継続する。具体的には下記の3つの項目に記したように、核内受容体ERRおよびDax1による代謝のswitchingとfine tuningに焦点をあて、ChIP-Seqとメタボローム解析を行い、代謝と多能性を結ぶ鍵となる因子の同定を試みる。 a) 初期化成功群と不成功群における、核内受容体の発現レベルと代謝の経時的解析:初期化成功群と不成功群で、核内受容体やそのコファクターの発現量の経時的変化や、酸化的リン酸化・解糖系など代謝状態の経時的変化(seahorse細胞内代謝測定)の解析結果をもとに、今年度はさらにメタボローム解析により初期化に重要な代謝産物の網羅的解析を行う予定である。 b) 初期化成功群における、核内受容体ERRおよびDax1発現制御の解析:初期化因子によりどのような機序で核内受容体ERRが一過性に発現誘導されるかを、初期化成功群と不成功群にわけて解析を行う。プロモーター解析や初期化因子に対する抗体を用いたChIPアッセイを行う。さらに、申請者らが見出した新規初期化成功マーカーである核内受容体Dax1にも着目する。Dax1はコリプレッサーとして機能することが知られているので、これがERRの発現にどのような影響を及ぼしているか否かを、Dax1と結合するタンパク質やDNA領域の解析を行う。 c) ERRとDax1による代謝のswitchingとfine tuningに関わる制御機構の解析:Dax1は、ES細胞においてOct4の発現量を精密に制御することで未分化性のfine tuningを行っている可能性が示唆されている。そこで、初期化過程において、未分化状態における酸化的リン酸化から解糖系への代謝のシフトにDax1が及ぼす影響を検証する。
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Research Products
(3 results)