2014 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症におけるマイクログリア依存的シナプス除去機構の破綻とBDNFによるその回復
Publicly Offered Research
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
26117504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90431890)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経発達障害 / マイクログリア / シナプス / 海馬 / BDNF |
Outline of Annual Research Achievements |
poly(I:C)-ASD マウスの苔状線維シナプスの構造学的および機能学的な検証をおこなった。poly(I:C)-ASDマウスの海馬CA3野における興奮性および抑制性シナプスの発達時期依存的な変化を、構造学的(免疫染色法等)および機能学的(電気生理学的手法:パッチクランプ法および脳波の解析)な側面から詳細に解析した。その結果、poly(I:C)-ASDモデルマウスのCA3野における苔状線維の興奮性シナプス数が増加することを発見し、抑制性シナプス数にはコントロールマウスと変化がないことが明らかになった。 海馬CA3野におけるシナプス除去へのマイクログリアの関与を検証した。まずコントロールマウスで確認された発達時期依存的なシナプス除去(P15-P30)にマイクログリアが関与する可能性を検証した。同時期にマイクログリアの活性化を抑制するミノサイクリンを投与したところ、シナプス除去が阻害され、CA3野におけるシナプス数の上昇することを免疫染色法によって確認した。また、マイクログリアによるシナプス貪食を、免疫染色法と3D画像再構築法を利用して検証したところ、発達時期依存的なシナプス除去にマイクログリアによる貪食作用が関与することが明らかになった。なお、同様の解析により、poly(I:C)-ASDマウスの海馬CA3野ではマイクログリアによるシナプス貪食能力が低下していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
poly(I:C)-ASD マウスの苔状線維シナプスの構造学的および機能学的な検証はほぼ完了した。特に、構造的な観点から、海馬CA3野における興奮性シナプスの数のみが上昇していることを明らかにし、計画の一部が完了した。電気生理学的手法を用いた機能学的な検証に関しては、海馬CA3野における興奮性入力がASDモデルマウスにおいて上昇することを明らかにしつつある。現在は興奮性入力のより詳細な解析を続けている。本件に関しては、当初の計画をほぼ達成したといえる。 海馬CA3野におけるシナプス除去へのマイクログリアの関与を検証した。その結果、マイクログリアによるシナプス貪食作用が発達期の海馬CA3野におけるシナプス除去に関与することを明らかにした。本件に関しては、当初の計画を完了した。 なお、マイクログリアの活性化度合いを定義する新しい指標を確立するためにマイクログリアのCa2+動態変化を検証した。本件に関しては、Iba1-YCnanoマウスを利用して、細胞体におけるCa2+動態変化の検出には成功したが、活性化度合いとの相関性などの検証はおこなっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクログリアのシナプス除去への神経活動の関与の有無を検証する。具体的には、ASDモデルマウスの一部の顆粒細胞の神経活動の上昇によって、苔状線維シナプス間に活動の強弱を誘導し、活動の弱いシナプスをマイクログリアに除去させることを試みる。また、顆粒細胞の神経活動とマイクログリアの活性化を結びつける因子としてBDNFの関与を検証する。これは、顆粒細胞が特にBDNFの発現量が強い神経細胞であり、活動依存的にBDNFを放出することが知られているためである。 まず、顆粒細胞の神経活動を薬理遺伝学的にコントロールすることを試みる。薬理遺伝学的手法としてDREADDシステムを利用する。同システムでは、遺伝子改変を加えたムスカリン受容体と、これらの受容体に特異的なリガンドである「CNO(clozapine-n-oxide)」を処置することにより、in vitroおよびin vivo(腹腔内投与で可能)の実験系でDREADD受容体を発現させた神経細胞のみを、活性化または不活性化させることが可能である。DREADD受容体はAAVウィルスを用いて顆粒細胞に感染させる。 上述の実験系を用いて、まずin vivoで苔状線維シナプスの神経活動に強弱を誘導し、マイクログリアが活動の弱いシナプスを選択的に貪食する可能性を免疫染色法によって検証する。次に、海馬切片培養系においてDREADDにより顆粒細胞の活動を変化させた際のマイクログリアによるシナプス除去をタイムラプスイメージング法によって可視化する。マイクログリアを可視化するためには、CX3CR1-GFPマウスを利用する。また、神経活動依存的な、マイクログリアによるシナプス除去にBDNFが関与する可能性を組織培養切片系で検証する。
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