2014 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路発達におけるミクログリアの機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
26117517
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミエリン / 小脳 / phospholipase / グリア / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳類の脳の形態的および機能的発達過程におけるmicrogliaの役割に着目し、グリアによる脳機能成熟の分子機構を明らかにすることが目的である。このため活性化microgliaに選択的に発現し貪食に関わるPLD4の遺伝子改変動物を用い、1.発達段階および成熟脳の解析、2.同マウスから調製した培養microgliaの機能解析を行った。 1.小脳では生後7日目をピークに一過性にmicrogliaが活性化し、PLD4強陽性となる。そこで発達段階のPLD4欠損マウス小脳の変化を組織学的に解析した。その結果、プルキンエ細胞層の形成や樹状突起の伸展、astrocyteには特に変化が見られないが、欠損マウスではmicrogliaの活性時期が野生型と比べて遅れていた。microgliaの活性時期は髄鞘形成期と一致するため、髄鞘マーカーのMBP染色を行い、パイロット実験と同様に髄鞘形成の遅れを明らかにした。また、oligodendrocyte(OL)前駆細胞あるいはOlig2陽性OL系譜細胞数には違いがない一方CC1陽性成熟OLに違いを認め、OL成熟過程の遅延とそれに伴う髄鞘形成の遅れが示唆された。 2.小脳における髄鞘形成の遅れとmicrogliaの関連性を明らかにするために、野生型およびPLD4欠損マウスから抗CD11b抗体結合磁気ビーズを用いてmicrogliaの単離を行った。これにより生後数週間目のマウス各個体から安定してミクログリアを得ることが可能となった。これらの細胞から分泌されるサイトカインの種類は、LPS刺激では違いはないが、IL-4刺激では異なる傾向が見られた。この細胞を用い、野生型と欠損マウスミクログリアの貪食、活性化した際の遺伝子発現変化、分泌するサイトカイン等の違いなどを明らかにすることが重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、PLD4を欠損したミクログリア存在下では小脳における髄鞘の形成に遅れが生じること、オリゴデンドロサイト前駆細胞の小脳内への移動に大きな違いはなく、CC1陽性の成熟オリゴデンドロサイトに違いがあることから、成熟過程での遅れであることが本年度の研究で明らかになった。オリゴデンドロサイトの分化・成熟には軸索からの直接的な影響と他のグリアを介した影響が考えられるが、少なくとも形態的にはプルキンエ細胞の発達の遅延は認められないことから、ミクログリアの直接的な影響の可能性が示唆される。このため、今後分子機序を調べるためには培養系による解析が必須となる。これまでミクログリアの単離は、生直後のマウスから初代グリア培養系を経て行ってきたが、同腹から常に十分な数の野生型とPLD4欠損型胎仔を十分確保することが難しいため、前述したような磁気ビーズを用いて単離を行うことにした。このため、培養系を用いた分子レベルでの解析に当初の予定より遅れが出たが、現在ではこの方法で確実な収量と十分な精度のミクログリアが得られるようになったため、今後培養細胞を用いた実験の遅れは十分に取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度でより確実に研究を推進させるため、連携研究者として教室所属の助教と講師の2名を加えて研究体制を強化する予定である。また、複数の遺伝子改変マウスの維持と供給のため引き続き実験補助員を雇用する。 現時点では、ほぼ当初予想したとおりの結果が得られていることから、小脳回路形成の最終段階である髄鞘形成過程にミクログリアが関わっている可能性が考えられる。今後、引き続きPLD4欠損マウスから単離した細胞を用いてミクログリアがどのように関わっているかを分子レベルで明らかにすると共に、PLD4自体がミクログリアの中でどのような役割を果たすのかを知ることが重要と考える。このため、次年度は下記のような推進方策を考えている。 1.PLD4の役割を明らかにするために、Iba1-tTAマウスとPLD4欠損マウスをかけ合わせ、薬剤投与によってPLD4発現を調節できるマウスを作製し、ミクログリアにおけるPLD4の量的変化と小脳発達の関連性をin vivoで解析する。また、ミクログリアの変化に伴う軸索発達と髄鞘形成の関係性を明らかにするために、免疫組織学的解析だけでなく電子顕微鏡解析も行う。 2.欠損マウスから調製したミクログリアを用いて、活性化状態での貪食や分泌されるサイトカイン等の違いなどPLD4欠損によるミクログリアの違いを明らかにする。貪食に問題がある場合、欠損マウスや過剰発現マウスにおけるオリゴデンドロサイトのアポトーシスやプルキンエ細胞の軸索刈り込みへの影響を見る必要がある。また、欠損マウスミクログリアで分泌に変化のあった因子に関して培養オリゴデンドロサイトの分化への影響を調べる予定である。
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