2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内共生細菌による宿主へのウイルス耐性付与機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
26117703
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉田 祥一朗 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90221944)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 微生物 / 感染症 / 昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内共生細菌は、自立増殖が出来ないために、宿主に利益を与え共生関係を維持する。2008年に、細胞内共生細菌であるボルバキアが、感染したショウジョウバエに、プラス鎖一本鎖RNAウイルスに対する抵抗性を付与することが報告された(Hedges et al. Science)。ボルバキアは、垂直伝搬し自立増殖できない。したがって、この現象は、共生細菌が宿主を改変し、ウイルス感染を利用して共生細菌を保菌する個体群を維持し、種の伝搬を図る戦略と捉えることが出来る。しかしながら、この現象の分子機構は全く明らかにされていない。そこで、本研究では、研究項目(1)共生細菌による宿主ウイルス耐性付与に関わる因子のゲノムワイドな探索、研究項目(2)ウイルス耐性付与における宿主RNA結合タンパク質の役割、を推進する。 本年度は、(1)において、研究代表者が確立した共生細菌によるウイルス増殖抑制を簡単に検出できるレポーターシステムを用いて、機能欠失型の遺伝学的スクリーニングと、機能獲得型の遺伝学的スクリーニングを行った。機能欠失型の遺伝学的スクリーニングとして、標的遺伝子の発現を抑制できるRNAi系統ライブラリーの2480系統、遺伝子変異体ライブラリーの803系統を解析した。機能獲得型の遺伝学的スクリーニングとして、標的遺伝子を強制発現できる904系統の解析を行った。その結果、発現抑制により共生細菌によるRNAウイルス増殖抑制をキャンセルする遺伝子としてhowを同定した。(2)では、宿主のRNA結合タンパク質(RBP)が、RNAウイルスの増殖に特異的に必要であることを明確に示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画は、ほぼ全て実施され、目指した研究成果を得ているから。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた研究計画はほぼ全て実施されており、当初の研究計画に変更はない。したがって、平成27年度は、予定通り、研究項目(1)では、howが共生細菌によるRNAウイルス増殖抑制を直接的に阻害しているのか、それとも共生細菌そのものの増殖に必要であるのかを確認する。研究項目(2)では、RBPをショウジョウバエ個体で過剰発現し、共生細菌によるウイルス増殖の抑制が解除されるかどうか調べる。これにより、共生細菌が宿主を改変し、宿主にRNAウイルスに対する抵抗性を付与する際に、宿主のRBPを利用していることが明確になる。
|
Research Products
(1 results)