2014 Fiscal Year Annual Research Report
バイオリファイナリーのための共生クロレラのマルトース分泌メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
26117716
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藍川 晋平 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40567252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微細藻 / バイオテクノロジー / 共生藻 / 応用微生物 / 植物生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,原油の枯渇により,穀物から微生物による発酵プロセスで液体燃料や汎用化成品原料を生産するバイオリファイナリーの構築が進められている.しかし,この穀物の利用は食糧生産と競合するため,食糧価格高騰の問題を抱えている.研究代表者は繊毛虫と共生し,マルトースを細胞外に分泌する共生クロレラに注目した.共生クロレラにマルトースを高分泌させ,同時に微生物が発酵生産することができれば,前処理不要の生産プロセスを構築できる.しかし,共生クロレラのマルトース生産能は充分に評価されていない.そこで本研究では共生クロレラが分泌するマルトースをバイオリファイナリーの糖質源として利用するために,マルトース分泌機構の解明を通して,共生クロレラのマルトース生産能を評価する. 平成26年度は,多数の共生クロレラ株のマルトース分泌能および様々な培養条件がマルトース分泌能に及ぼす影響を調べるために,多くのサンプルを同時に培養可能であり,かつサンプリングすることなく細胞増殖を評価できる培養システムを開発した.そして,野外環境から採集した数種の共生クロレラの無菌化に成功し,それらの新規に単離した株の中から高いマルトース分泌能を有する共生クロレラ株を見いだすことに成功した.またマルトース分泌メカニズムを調べるための網羅的代謝プロファイリング技術の開発に着手し,共生クロレラのマルトースの生合成に関係する代謝経路(解糖系,ペントースリン酸経路)の中間代謝物質を網羅的に解析するために,共生クロレラからの代謝物の抽出法,代謝反応のクエンチング手法を開発した.平成26年度に開発した培養システム・分析技術は,共生クロレラのマルトース分泌メカニズムの解明を推進させるために役立ち,また今回得られた高マルトース分泌能を有する共生クロレラ株を用いることで,マルトース分泌機構の一端を解明できると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに共生クロレラが分泌するマルトースをバイオリファイナリーの糖質源として利用するために,共生クロレラのマルトース分泌機構の解明を目指して,下記の課題に取り組み,培養システム・分析技術の開発および高マルトース分泌株の特定に成功しているため,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.取り組んだ各課題での具体的な進捗を下記に示した. 【課題Ⅰマルトース高分泌能を有する共生クロレラ株の探索】多くのサンプルを同時に培養可能であり,かつサンプリングすることなく細胞増殖を評価できる培養システムを開発した.本システムを用い,新規に単離した株を含む数株の共生クロレラのマルトース分泌能を評価し,高いマルトース分泌能を有する共生クロレラ株を見いだすことに成功した. 【課題Ⅱマルトース分泌能に関わる代謝反応の特定】マルトース分泌メカニズムを調べるための網羅的代謝プロファイリング技術の開発に着手し,共生クロレラのマルトースの生合成に関係する代謝経路(解糖系,ペントースリン酸経路)の中間代謝物質を網羅的に解析するために,共生クロレラからの代謝物の抽出法,代謝反応のクエンチング手法を開発した.今後,本解析法を用いて,異なる分泌能を有する共生クロレラ株間の中間代謝物質の蓄積量の変化を調べる. 【課題Ⅲトランスクリプトーム比較解析によるマルトース分泌能に関わる遺伝子の探索】トランスクリプトーム解析を行うための測定条件の条件検討を行った.実際の測定は28年度に実施する. 【課題Ⅳ共生クロレラのマルトース輸送体の特定および発現量比較】マルトース輸送体を解析するためのタンパク質組成分析法の開発を行った.本システムを用いて,異なる分泌能を有する共生クロレラ株間のマルトース輸送体の発現量を比較する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに多くのサンプルを同時に培養可能であり,かつサンプリングすることなく細胞増殖を評価できる培養システムの開発,数種の共生クロレラの単離・無菌化,高いマルトース分泌能を有する共生クロレラ株の特定,マルトース分泌メカニズムを調べるための網羅的代謝プロファイリング技術の開発を行った.平成28年度はマルトース分泌メカニズム解明に向けて主に下記の研究課題に取り組む. 【マルトース分泌能に関わる代謝反応の特定】共生クロレラのマルトース分泌能に関わる代謝反応を特定するために,共生クロレラのマルトース分泌量と解糖系・ペントースリン酸経路の代謝反応との相関を調べる. 【トランスクリプトーム比較解析によるマルトース分泌能に関わる遺伝子の探索】共生クロレラのマルトース分泌能に関する候補遺伝子を探索する.そのため,異なるマルトース分泌能を有する共生クロレラのトランスクリプトーム比較解析を行う.そして,メタボロームデータと合わせて,考察し,クロレラのマルトース分泌効率に関係する候補遺伝子を特定する. 【共生クロレラのマルトース輸送体の特定および発現量比較】共生クロレラの細胞膜に存在するマルトース輸送体の発現量もマルトース分泌能に大きく影響すると考えられる.まず共生クロレラのマルトース輸送体を特定し,異なる分泌能を有する共生クロレラ株間のマルトース輸送体の発現量を比較する.
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Research Products
(8 results)