2014 Fiscal Year Annual Research Report
キゴキブリ集団間における細胞内共生系とセルロース消化共生系との代謝競合
Publicly Offered Research
Project Area | "Matryoshka"-type evolution of eukaryotes |
Project/Area Number |
26117722
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
徳田 岳 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (90322750)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内共生系 / 腸内共生系 / ブラタバクテリウム / キゴキブリ / 比較ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は予定通り、アメリカ・アパラチア山脈においてキゴキブリのサンプリングを実施した。ノースカロライナ州立大学のChristine A. Nalepa准教授の指導の下、当初予定していた2タイプの染色体数のキゴキブリだけではなく、これまで報告されている染色体数の異なる4タイプのキゴキブリを採集することができた。これらのキゴキブリの脂肪体からDNAを抽出し、MiSeqを用いてシーケンスした。De novoでアセンブルした後、共生するブラタバクテリウムのコンティグ断片をTBLASTXによって選別し、これに対してリードをマッピングし、伸長することでアセンブルを実施した。最終的に得られたコンティグについて、独自のスクリプトを用いてアノテーションを行った。その結果、これらのゲノムサイズは約607 kb~613 kbであり、543~547個のCDSをコードしていた。詳細な比較解析の結果、これらのブラタバクテリウム間で大きな遺伝子レパートリーの違いは認められなかったが、主にシステイン生合成関連遺伝子の有無(欠落や偽遺伝子化)に顕著な違いが認められたほか、2つのトランスポーターと考えられる遺伝子の有無にも差が認められた。キゴキブリの系統関係と照らし合わせた結果、これらの遺伝子の欠落や偽遺伝子化はキゴキブリの進化の過程で2度独立に起きており、地理的な分布と何らかの相関がある可能性が示唆された。また、いずれのブラタバクテリウムも硫酸還元に必要な生化学経路を欠落していたことから、ブラタバクテリウムと腸内の硫酸還元細菌との競合が存在する可能性も考えられた。さらに代謝物解析については酢酸菌によるセルロース合成を開始し、摂食条件について予備実験的な検討を開始した。予備的な解析では個体間のばらつきが大きく、さらに慎重な条件検討が必要であろうと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたキゴキブリ(C. punctulatus)についてはNalepa准教授の指導の下、全ての染色体数のキゴキブリをサンプリングすることができ、当初の計画以上の成果をあげることができた。反面、アウトグループに予定していたキゴキブリ(C. clevelandi)のサンプリングについては分布域の特定が難しく、予定していたサンプリング期間内で十分な成果をあげることができなかった。ただ、サンプリングできた種類については順調に比較ゲノム解析をこなすことができ、当初は想定していなかった地理的分布に対応したゲノム進化の仮説を導くことができた。代謝物解析についても予定通り予備的実験を開始しており、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から、各宿主のブラタバクテリウムにおいてシステイン生合成関連遺伝子の有無(欠落・偽遺伝子化)について顕著な差が認められたことに加え、これが地理的な分布と関連している可能性が浮かび上がってきた。この仮説を証明するためには、今回採集ができなかった地理的に隔離されたキゴキブリについても解析する必要があるだろう。また、アウトグループとなりうる別種のキゴキブリについても採集し、これらにはシステイン生合成経路が存在することを確認する必要がある。また、遺伝子の有無と代謝物の有無との関連を証明するためには、当初の予定通りメタボローム解析を進める必要があることに加え、必要に応じて腸内微生物叢や地理的に異なる地域の土壌微生物叢の比較解析についても検討する必要があると思われる。
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[Journal Article] Metabolomic profiling of 13C-labelled cellulose digestion in a lower termite: insights into gut symbiont function2014
Author(s)
Tokuda, G., Tsuboi, Y., Kihara, K., Saitoh, S., Moriya, S., Lo, N. & Kikichi, J.
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Journal Title
Proceedings of the Royal Society B
Volume: 281
Pages: 20140990
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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