2014 Fiscal Year Annual Research Report
随伴性検出メカニズムを基盤とした共感性の発達
Publicly Offered Research
Project Area | Empathic system |
Project/Area Number |
26118502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
開 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30323455)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 随伴性検出 / 発達科学 / 認知科学 / おしゃぶり型デバイス / 吸啜行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、共感性の発達認知神経科学的理解とそれをサポートするための新たな実験パラダイムの創出を目的とする。この目標を達成するためには、四肢のコントロールや意思の伝達・理解等さまざまな点において発達途上にある乳幼児でも計測可能な指標を確立する必要がある。 本研究では、3ヶ月児から12ヶ月頃までの乳児と養育者を対象とした発達認知科学的実験を行うことで、以下の3つの研究目標を達成する。【目標1】四肢による運動を前提としない「情報デバイス」を構築すること。【目標2】社会的随伴性検出に関わる脳活動レベルの指標を確立すること。【目標3】「情報デバイス」と「脳活動指標」を用いて共感性の発達起源を明らかにすること。 従来の乳児研究が一方向的に刺激を与えて被験児の反応を分析するのに対し、本研究の特徴は、母子双方の能動性に着目した相互随伴的なやり取りに焦点を当てている点である。これにより、自身の意思や意図を表出することが困難である乳児と養育者との随伴的相互作用経験を分析するための認知科学的基盤を形成する。 我々は、これまで3000名を超える乳幼児を対象とした脳機能計測・行動実験を行っており、乳児脳波計測のノウハウを本研究に生かすことができる。本研究で得られた研究成果は、共感性領域における重要な研究課題の1つである「共感性の個体発生メカニズム」に発達科学的知見を与えることが期待できる。また、得られる成果は育児に不安を抱く多くの人々にとっても示唆を与えるため、専門誌だけでなくマスコミ等を通じで積極的に情報発信をする。 平成26年は、「非栄養吸啜行動に着目した「おしゃぶり型情報デバイス」の開発」(研究項目1)を中心に行った。このデバイスを用いて実施した乳児実験では随伴性検出に関する新たな知見を得ることができ、現在国際的トップジャーナルに投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年は、「非栄養吸啜行動に着目した「おしゃぶり型情報デバイス」の開発」(研究項目1)を中心に行った。このデバイスを用いて実施した乳児実験では随伴性検出に焦点を当てた研究を実施し、おしゃぶりデバイスに連動して動く視覚対象と連動しない(無関係な)視覚対象の弁別が6ヶ月乳児であっても可能であることを発見した。この発見は、従来の乳児研究を大きく進展させるものであり、現在、国際的トップジャーナルに投稿準備中である。 これに加えて、26年度には、「ダブルTV環境を用いた2個体脳同時活動計測と時間周波数解析」(研究項目2)における行動実験を実施した。ここでは、幼児を対象として、ダブルTV環境における模倣実験を実施し、デモンストレータと被教示者の間に僅か1秒のコミュニケーション遅延あっただけで幼児の模倣学習に影響を与えることが発見された。この研究成果についても、現在国際誌に投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、新たな方法・指標を用いた共感性実験(研究項目3)を中心に研究を実施する。これまでの乳児研究で使われてきた方法は注視時間を測度とする(乳児からみて)受動的なものであった。たとえばHamlinらの研究は、乳児が利他的行動をとる対象をそうでない対象より長く注視する(あるいは接近行動をとる)ことをもって早期からの利他性萌芽を主張している。しかしながら、これらの研究は、乳児の直接的利他行動を観察している訳ではない。こうした受動的・二次的指標に対して、【研究項目1】で構築するおしゃぶりマウスは、乳児自身がPCディスプレイ上のCGキャラクタを操作することを可能とするものである。これを用いることで、ディスプレイ上のCGキャラクタに協力的に振る舞ったり、非協力的キャラクタの行動を妨害したりするかどうかを精査できる。 研究項目3では、まずHamlinらの実験をおしゃぶり型マウスを用いることで改良し、真に乳児が利他的であるかどうかを確認する。また、同一被験児に脳活動実験と共感性実験を実施することで、研究項目2の随伴性に係わる脳活動指標を能動的利他行動実験におけるパフォーマンスと対応付け、共感性の発達と随伴性検出の発達を精緻なレベルで関連づける。
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Remarks |
GUGEN大賞は、新たなセンサ開発に与えられる賞で、当研究室で開発したおしゃぶりセンサが「大賞」を受賞している。
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[Journal Article] Urinary oxytocin positively correlates with performance in facial visual search in unmarried males, without specific reaction to infant face.2014
Author(s)
Saito, A., Hamada, H., Kikusui, T., Mogi, K., Nagasawa, M., Mitsui, S., Higuchi, T., Hasegawa, T., & Hiraki, K.
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Journal Title
Frontiers in Neuroscience
Volume: 29:217
Pages: 29:217
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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