2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己確立の脳メカニズム解明
Publicly Offered Research
Project Area | Adolescent mind and self-regulation |
Project/Area Number |
26118702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉浦 元亮 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (60396546)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 / 認知科学 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は複数の「自己」を持ち(例:研究者の私と家庭人としての私)それらの間の葛藤を経験する。さらにこれらの「個別的自己」を俯瞰的に眺める「総合的自己」も存在し、適応的に個別的自己間のバランスを調整する。思春期・青年期の“自己の確立”は、個別的自己の成熟を経て、その間の葛藤を調整する総合的自己の確立までの過程である。申請者は様々な自己に関する脳機能マッピング研究の成果に基づいて、行動出力とフィードバック入力の連合(「スキーマ」)が環境とのインタラクションの中で3階層に発達し、各層で異なったレベルの自己を実現するモデルを提案している。これに立脚し、自分と他者の関係性を表象する第2層の「対人関係(対人行動-他者反応)スキーマ」(dMPFC, TPJ他)が土台となって、自己の社会的価値・役割を表象する第3層の「社会価値(社会行動-価値評価)スキーマ」(vMPFC, PCC)が発達する過程が“自己の確立”に相当する(すなわち個別的自己と総合的自己は、それぞれ対人関係スキーマと社会価値スキーマを基盤とする)というのが本研究で実証したい作業仮説である。これにより本領域の目指す「前頭前野を基盤として、高度なメタ認知を活用して自己像を表象し…」という人間像を認知神経科学的に具現化する。平成26年度は個別的自己と総合的自己の脳機能マッピングのために健常大学生被験者を対象に機能的MRI実験の準備(実験デザイン・倫理委員会信施・予備行動実験等)・デザイン検証を行い、3月には計測の着手にこぎつけた。事前面接で被験者ごとに個別的自己を定義し、MRI実験では被験者に個別的自己と総合的自己にポジショニング(その自己の立場になりきる)させながら自己価値評価課題を行わせた。少数被験者での予備的解析では、後者でのvMPFCの賦活上昇という作業仮説に整合的な結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前面接法や課題条件などの実験プロトコールを予定通りに確立し、機能的MRI実験に着手することができた。事前面接については、数度の予備実験を通じてプロトコールを改良し、実験者のスキルに依存しない半構造化面接をマニュアル化することに成功した。また対照条件として、有名人や様々なレベルの個人的知己という選択肢の中から、これも数度の予備実験を通じて適切なレベルの個人的知己を選択し、これを各被験者に対して選択させるプロトコールも確立した。さらに自己確立の度合いを定量化する質問紙について、大規模な資料調査を行い、包括的な質問紙バッテリーを確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度には機能的MRI実験を前期中に完結し、個別的自己と総合的自己の脳機能マッピングを完了させる。さらに、自己確立の度合いを定量化する質問紙尺度得点と脳活動との関係を解析し、自己確立の脳メカニズムを解明する。研究成果の発表を関連する様々な学会で発表し、論文を執筆する。
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Research Products
(6 results)