2014 Fiscal Year Annual Research Report
思春期における自己制御の発達と学校・社会適応との関連に関する行動遺伝学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Adolescent mind and self-regulation |
Project/Area Number |
26118709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 雄介 京都大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (20615471)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 思春期 / 自己制御 / セルフコントロール / 発達 / 学校適応 / 社会適応 / 双生児 / 行動遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2007 年にはHeckman (2000 年ノーベル経済学賞受賞者)が,2011 年にはMoffitt らの研究グループが,いずれもPNAS 誌において,子ども期のパーソナリティ特性,とりわけ自己制御が,後の人生において重要な結果 (e.g., 学業達成,健康状態,裕福度,犯罪歴)に対して長期にわたって影響を与えることを報告した。しかしながら,その間の時期=思春期における自己制御の構造と予測力については未解明の部分が多い。 そこで,平成26年度における研究では,9-18 歳を対象とした質問紙調査をウェブ上で実施し,単胎児家庭1,200組, 双生児家庭2,022 組から有効回答を得た。調査においては,思春期における自己制御の構造について複数の指標を用いて(e.g., conscientiousness, grit, effortful control, self-control),横断データに基づく思春期の自己制御の擬似的な発達の様子の確認を行い,また,認知能力と同様に,“汎用的な”自己制御は存在するかどうか探究を行った。その結果,自己制御に関連する心理学的構成概念は,(1) (共感性や援助行動などの知見と同様に)思春期の間には平均値のレベルでは顕著な得点の上昇は示さないこと,(2) 思春期の自己制御の個人差には遺伝率が約60%あり,年齢が上がるにつれて遺伝率も上昇すること,(3)共通経路モデルを用いた分析では各指標の背後にひとつの潜在因子を仮定することができ,これは認知能力と同様に一般に汎用的な自己制御の存在を示唆する証左のひとつと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,研究計画書に記した通り,予備調査を実施した上で,思春期の単胎児および双生児の第1時点目のデータをウェブ調査にて収集した。ウェブ調査によるふたご家庭のデータの収集実績はこれまでにほとんど無く,今回の収集実績はふたごのデータが集めにくいことだけに起因する人間行動遺伝学研究に対する高い参入障壁を下げることに直接的に寄与できたと同時に,今後は第2波・第3波のデータが収集されるのを待ちつつ,発達行動遺伝学解析を順次実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り,本年度に実施した第1波調査をベースラインとして,次年度は第2波・第3波の調査を粛々と実施して,価値ある縦断データを収集し,横断データからは言及することのできない知見を継続的に提供していく。その際,サンプルの脱落や損耗については十分に留意し,欠測時に生じ得るバイアス補正を統計的に行い,計画書にて述べた通り,適宜,心理測定の専門家にアドバイスを求める。いずれの点に関しても,研究計画書から変更や修正を行う予定は無く,研究遂行上の問題点も現時点においては生じていない。
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Research Products
(10 results)