2014 Fiscal Year Annual Research Report
被災体験が自己参照・自己制御に与える影響の長期追跡調査
Publicly Offered Research
Project Area | Adolescent mind and self-regulation |
Project/Area Number |
26118716
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
安藤 俊太郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (20616784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 被災体験 / 抑うつ / 追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に達成した成果は、研究基盤の構築、2時点データの解析、3時点データの基礎的解析の三点であるが、主に前者二点につき、以下に詳述する。 第一に、本年度における最も重要な成果の一つは、本研究の体制・基盤の構築である。研究対象地域である被災地自治体において、当該自治体職員とともに質問紙を作成し、自己制御性の縦断的検証に必要なデータ収集の体制を整えた。今回、感情制御の指標としてK6により抑うつ症状を評価し、行動制御の指標としてCAGEによるアルコール依存傾向の評価を行った。そして、当該自治体とともに、後方視的データの使用も含めた縦断研究の遂行に必要な倫理的配慮を整え、研究機関における倫理審査委員会からの承認を得た。 第二に、被災1年後(2012年)と2年後(2013年)の2時点の縦断データの解析を行い、自己制御性の変化とその変化に影響を与える要因を検証した。研究対象となる当該自治体の特定健診対象者約12000名のうち、約3500名、約4100名がそれぞれ2時点の健診を受診した。そのうち、2時点の両方において健診を受診した約2200名を対象としたデータ解析を行った。その結果、抑うつ症状(感情制御)は縦断経過において悪化傾向がみられた。一方、アルコール依存傾向(行動制御)の平均値は2013年の方が2012年よりも高いものの、その変化は統計学的に有意な悪化ではなかった。また、2012年における重度抑うつ群の約半数が、2013年にも重度抑うつのまま遷延していることが明らかとなった。さらに、2時点にわたる抑うつ症状の変化に影響を与える要因を検討したところ、女性であること、家屋の被害が大きいこと、などが抑うつ症状を悪化させる要因であった。これらの知見は、大規模自然災害や心的外傷体験後の自己制御性の発達・再帰の支援において生かされうるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縦断研究の基盤を構築し、被災から3年後までの長期縦断データの収集に成功した。また、長期縦断追跡調査の専門家の助言を元に、縦断データの解析を進めることができたため、研究はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究において行った東日本大震災による精神的健康への影響について系統的レビューの知見を踏まえ、本研究において取得した2時点データおよび3時点データの詳細な解析を元に論文化を進めていく。
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