2014 Fiscal Year Annual Research Report
記憶形成における過去、現在、未来の神経活動のダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
26119507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 洋 東京大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (10549603)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 / 記憶・学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある時点で観察される”現在の神経活動”は、“過去の神経活動”と外部刺激の演算によって決定される。そして、回路構造の変化を介して”未来の神経活動”が規定されると考えられる。本研究では、”学習前の過去の神経活動”、”外部刺激の影響を受ける現在の神経活動”、”未来の神経活動に影響を与える可塑性”の関係を明らかにする。 特に今年度は、学習後に遅発的に生じる遺伝子発現が、樹状突起スパインの刈込みやニューロン集団の再活性化に寄与し、長期記憶を安定化させることを明らかにした。最初期遺伝子Arcは、学習直後に発現が誘導され、記憶の固定化に寄与することが知られている。我々は、文脈依存的恐怖条件づけの後に海馬のArc発現を時間を追って解析することで、Arcが条件づけ直後だけでなく、12時間後にも上昇することを明らかにした。この遅発的なArc発現を抑制すると、2日間の記憶は保持されたままだったが、7日後の記憶は障害された。また、学習に伴って生じる樹状突起スパインの刈込みもArc発現の抑制によって障害された。樹状突起スパインの刈込みは、不要な回路の除去によって、必要な回路の選択的な安定化に結びつくと考えられる。そこで、条件づけ時に活性化したニューロン集団が、想起時にも再活性化するかを調べた。コントロール群は再活性化が認められたが、Arc抑制群では再活性化が生じなかった。また。以上の結果から、遅発的なArc発現は樹状突起スパインの刈込みやニューロン集団の安定的な不活性化を通じて、記憶の長期的な固定化に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の活動した神経細胞を標識するマウスの実験系を確立し、学習と神経細胞の再活性化の関係を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の他者の行動は、その後の自分の神経活動や行動に影響を与える。本研究では、他者の行動が自分の神経活動、その後の行動に与える影響を調べる。 過去の活動した神経細胞を標識するマウスを用いて、他者の学習中に活動したニューロンを、あるいは、自分が学習している際に活動したニューロンを標識する。そして、他者の学習中に活動したニューロンと自分の学習時に活動したニューロンの関係を明らかにする。
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Research Products
(20 results)