2014 Fiscal Year Annual Research Report
近未来行動を表現するセルアセンブリ逐次活動の形成メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
26119530
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤澤 茂義 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (20589395)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | セルアセンブリ / 海馬 / 前頭前皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、げっ歯類の海馬において、近い将来の行動や時間に依存的に発火する細胞(エピソード細胞・時間細胞)の存在が報告されている。また、海馬のみならず、前頭前皮質でも同様に、近い将来の行動を予測できるニューロンの発火活動が観測される。このようなエピソード細胞や時間細胞の重要な特徴は、外部入力刺激に依存していない内的生成された活動であるという点と、発火する順序の定まっているニューロン群(セルアセンブリ)の逐次活動である、という点である。つまり、ネットワークにより内的生成されたセルアセンブリの逐次活動によって時間性や近未来行動が表象されていると言える。いかにしてこのようなセルアセンブリの逐次活動が形成されるのか、そのネットワークメカニズムを知ることが本研究の目的である。本研究では、時間性および近未来行動を表現する、海馬および前頭前皮質でのセルアセンブリの逐次活動の形成メカニズムの一端を明らかにすることが目標である。H26年度は、主に、短期記憶を必要とする意思決定課題の開発と、その課題行動を行っているときの前頭前皮質および海馬からの大規模電気生理記録を行った。具体的には、まず、T字型迷路、および頭部固定下での選択課題システムを作成し、手がかり情報をある程度の時間保持する必要がある短期記憶課題を構築した。そして、その短期記憶行動課題を行っているラットおよびマウスの前頭前皮質や海馬から、数十個のニューロンの活動を、大規模細胞外記録法を用いて記録することに成功した。そして、それらの記録されたニューロンが、短期記憶課題を遂行しているときに、逐次的活動を示していることを確認した。H27年度においては以上で得られたデータをより詳細に数理統計解析していくことにより、時間性の認識を生み出す局所回路構造の解明や重要な領域の特定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は、主に、①短期記憶を必要とする意思決定課題の開発、および、②その課題行動を行っているときの前頭前皮質および海馬からの大規模電気生理記録を行った。まず行動課題について、短期記憶を必要とする意思決定課題の開発を行った。具体的には、ラットを用いる実験系において、頭部固定下での選択課題システムを作成することで、手がかり情報をある程度の時間保持する必要がある短期記憶課題を構築した。このシステムの良いところは、実験者が記憶の保持に必要な時間の長さを任意に調節ができる点である。また、マウスを用いる実験系においては、T字型迷路を使って、視覚手がかかり刺激情報の記憶を必要とする短期記憶行動課題を確立した。本研究では、課題行動中の海馬や前頭前皮質のニューロン群の活動を解析するため、多数のニューロンの発火活動を同時に精密な時間スケールで観測する必要がある。この目的のため、本研究では高密度・多チャンネルのシリコンプローブを用いた大規模細胞外記録実験を行った。このシリコンプローブを海馬と前頭前皮質などに配置し、これらの部位のニューロンの活動を網羅的に観測した。そして、上記の短期記憶行動課題を行っているラットおよびマウスの前頭前皮質や海馬から、数十個のニューロンの活動を記録することに成功し、それらの記録されたニューロンが、逐次的活動を示していることを確認した。ただ、大規模記録されたニューロン群の活動の数理統計的解析に関しては、まだ十分なデータがそろっていないためにやや遅れている。この点については、H27年度において重点的に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
①行動課題の改良について。より時間の脳内表現を明快に観測できる行動課題になるよう改良を加える。現在までに開発しているものは、一定時間の短期記憶を必要とする意思決定課題であるが、さらに時間経過の弁別をも必要とする意思決定課題を追加で開発し、神経細胞群による時間表現をより観測しやすくする。 ②時間の脳内表現を担うニューロン群の活動の数理統計的な解析を行い、その活動の形成メカニズムを探る。まず一つ目に、局所回路での機能的結合性の解析:海馬や前頭前皮質がセルアセンブリの逐次活動を形成するために、どのような局所回路構造を有しているか調べる。ニューロン同士の発火タイミングの関連性を調べるクロス・コリレーション解析法を用いることにより、局所回路内でのニューロンの機能と結合性の関係を調べる。たとえば、近い時間の情報をコードするニューロン同士は、ミリ秒レベルでの機能的結合を有しているか、などを網羅的に調べる。二つ目に、海馬、前頭前皮質および中脳辺縁系の領域間相互作用の解析を行う。エピソード細胞や時間細胞は、動物が報酬関連行動、特に目標指向行動を行っている時のみに観測される報告より、応募者はその形成メカニズムに報酬関連行動を司る中脳辺縁系も深く関わっていると考える。そこで、海馬、前頭前皮質、中脳腹側被蓋野などの領域を同時に細胞外記録し、セルアセンブリの逐次活動の形成における領域間の相互作用の役割を明らかにしていく。以上の研究により、時間性の認識を生み出す局所回路構造の解明や重要な領域の特定を試みる。
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Research Products
(7 results)