2014 Fiscal Year Annual Research Report
合成生物学的手法による環境応答型プロモーターシステムの開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
26119714
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上平 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40202022)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 生物・生体工学 / バイオテクノロジー / 細胞・組織 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに開発した熱ショック誘導型の遺伝子大量発現システムがガンの温熱遺伝子治療に有効であるか検討することを目的として、担ガンマウスを使った動物実験を行った。磁性粒子は交番磁場中で発熱するため、磁場照射をスイッチとした遺伝子発現システムとして使用することとした。磁性粒子を担ガンマウスのガン組織に注入したのち、本研究により開発した温熱誘導治療遺伝子発現ベクターをガン組織に導入し、磁場照射によってガン組織を43℃、30分加温した。加温による温熱効果により、加温をしなかったものに比べて腫瘍の増大がある程度抑えられたものの、腫瘍組織の増大が認められたのに対し、本研究で開発した温熱誘導型遺伝子発現システムで発現遺伝子をTNF-αとしたプラスミドを導入した腫瘍組織では腫瘍の増大が完全に抑えられた。腫瘍組織で発現されたTNF-α量を測定したところ、磁場照射なしでは全く発現されておらず、加温によって生産量が増していることがわかった。以上より、本システムの遺伝子治療における有効性が確認された。また、環境応答型遺伝子発現ユニット作製の他の例についても検討を行った。ティッシュエンジニアリング分野における利用を考慮して、細胞ダメージ応答や酸素濃度応答の遺伝子発現ユニットを新たに構築し、細胞センサーとしての利用を検討した。細胞ダメージを検出するための遺伝子発現ユニット構築では、p53遺伝子のプロモーター領域を利用して、発現感度を増幅するための転写増幅ユニットを組み込んだ合成プロモーターシステムを構築し、酸素濃度応答遺伝子発現ユニットの構築では、酸素応答性が報告されているRTP801プロモーターと高酸素濃度で分解されるタンパク質ドメインとして知られているODD領域を組み合わせて利用することで、転写レベルおよびタンパク質レベルでの低酸素を検出可能な遺伝子発現システムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した熱ショック誘導型の遺伝子大量発現システムがガンの温熱遺伝子治療に有効であるか検討することを目的として、担ガンマウスを使った動物実験を行い、磁場照射によるガン組織の加温による温熱効果と本研究で開発した温熱誘導型遺伝子発現システムを用いた遺伝子治療の併用で著しい効果がみられることを明らかにすることができた。また、環境応答型遺伝子発現ユニット作製の他の例として、細胞ダメージ応答や酸素濃度応答の遺伝子発現ユニットを新たに構築し、細胞センサーとしての利用を検討した。細胞ダメージを検出するための遺伝子発現ユニット構築では、細胞障害を引き起こす薬剤の検出に利用できることを示すことができた。また、酸素濃度応答遺伝子発現ユニットの構築では、転写レベルおよびタンパク質レベルでの低酸素を検出可能な遺伝子発現システムを開発することができ、次年度に機能解析や応用のための検討を行う準備ができた。以上より研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した低酸素誘導型遺伝子発現システムを細胞ゲノムに組込み、気相酸素濃度変化に対する細胞応答をレポーター遺伝子発現挙動のモニターによって性能評価を行う。再生医療で扱われるような組織作製において、この細胞を混入させることで培養時の酸素環境のインジケーター細胞として使うことを試みる。この遺伝子発現システムのさらなる応用の可能性として、レポーター遺伝子の代わりにVEGFといった血管新生誘導因子の遺伝子に置き換えることで、人工組織を生体内に移植後に組織内部に毛細血管を誘導できるシステムとなるかについても検討する。また、これまで検討してきた遺伝子発現ユニットを細胞ゲノムの特定部位に組み込むための技術開発において、合成生物学的なアプローチを取り入れることによって、複数の遺伝子ユニットを細胞ゲノムの任意の位置に導入するための技術開発を行う。
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