2014 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応データ計測とベイズ推定によるデータ駆動反応化学の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
26120509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 岳彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90242099)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 反応速度計測 / メタン部分酸化 / Ru触媒 / Pt触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
TAP測定は、固体触媒に、パルス状に原料ガスを入射し、質量分析計により測定し、生成物と未反応物の応答を測定し、拡散係数や反応速度定数などの速度論的パラメーターを求める手段である。希ガスなどの吸着・反応性が無いガスの拡散の場合には、応答波形の予測は完全に記述が可能であるが、反応項を含む場合には、単純ではなくなる。解析のために、実測値を連立偏微分方程式のシミュレーションにフィッティングさせる事、および、スペクトルがパルス形状の重ね合わせとなっていることから、スペクトル分解の手法が使用できる。 メタン部分酸化反応にはメタンと酸素が直接反応して一酸化炭素と水素が生成する経路とメタンと酸素が反応して二酸化炭素と水が生成しその二酸化炭素とメタンが改質反応(ドライリフォーミング反応)を起こす間接的な反応経路が考えられている。そこで本研究は、高いメタン部分酸化反応活性を示すRu系触媒を用いてその反応機構についてTAP装置によって検討した。Ru/Al2O3(Ru:5wt%)7.5mg をリアクターに充填し前処理として800℃の温度領域において水素で30 分間、還元した。メタン-アルゴンの混合ガスと酸素ガス(CH4+Ar:O2=2:1)のパルスを600℃、700℃、800℃のそれぞれの反応温度で触媒層に導入し、生成物、反応物のスペクトルを得た。これらの結果から、メタンの転換の温度依存性、各転換生成物の時間依存プロファイル、カーボンバランスなどの結果について求めることができた。さらに、関係する気体単独の拡散挙動なども測定しており、反応速度定数パラメーターを決定するための実験データを得ることができた。引き続き、偏微分方程式シミュレーションとの比較について検討している。 また、並行して、白金クラスターの示すベンゼン酸化、フェノール生成の反応機構について密度汎関数法計算によりメカニズムを求めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた通りに、TAP測定による実験測定が進行し、データを取得することができた。これを偏微分方程式シミュレーションと比較する、という当初通りの予定で進行している。また、Ptクラスター触媒に関する計算化学的研究について、論文発表することができた。これについても、反応機構の解明を行う上で、重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、偏微分方程式シミュレーションについて開発を進めており、得られた実験データとの比較解析を実施する予定である。また、反応機構について、密度汎関数法による研究も合わせて行う。 更に、XPS測定の実施と、金属種のデコンボルーション、NMRピークのデコンボルーションについても実施する。 XPSスペクトルのスピン多重項ピーク対を基底関数としたスペクトル分解をベイズ推定を用いて行ない、複数の価数のイオンが存在する場合も任意性なくスペクトル分解を行う。 NMRスペクトルは有機分子の構造決定に不可欠であり、一次元の1H-NMR、13C-NMR及び二次元NMRスペクトルの測定と解析が広く行われている。1H-NMRは水素原子間のスピン間相互作用により、分子構造を反映したスプリットパターンを示すスペクトルを示す。純粋物質についてのNMRスペクトルの同定は問題なく行われており、測定データのデータベース化や、量子化学計算に基づいたスペクトル予測もなされている。化学反応の計測手段としてNMRを使用する場合には、既知物質の混合系となり、時には予期しない生成物が含まれることがある。NMR解析ソフトウェアとしては、マニュアルベースのピークピッキング機能などは整備されており、誰でも使用可能な状況となっているが、複雑なNMRスペクトルの重ね合わせが生じた場合には、それ以上解析が進まない場合が多い。この場合、試料の精製に精力を注ぎこんで、純度の高い状態にして再測定に進むケースがほとんどである。純粋状態のスペクトルを基底としたスペクトル分解を行う方法が確立すると、短時間で有効な物質組成に関する情報と未知成分のスペクトル解析を行うことが可能となる。NMR測定とスペクトル分解の方法確立を推進する。
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