2014 Fiscal Year Annual Research Report
スパースモデリングによる大規模カルシウムイメージングデータの解析手法の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
26120512
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
青西 亨 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00333352)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カルシウムイメージング / スパース / Gamma-Poissonモデル / ベイズ統計 / モデル選択 / 独立成分分析 / 樹状突起 / 細胞自動検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、蛍光イメージング装置の発達により、時空間的に高解像度で多細胞活動の長時間計測が可能となった。高時空間分解能データの長時間計測の実現により、膨大なデータをいかに解析するかという問題に直面するようになった。古典的なデータ解析手法では、研究者が手動で単一細胞の活動に関連すると思われる蛍光変化がある場所に、関心領域(region of interest, ROI)を設定する。データ量が膨大になるにつれて、手動によるROI設定が困難になり、細胞の自動検出が必要になっている。本研究の目的は、スパースモデリングにより進化した自動細胞検出技術を確立することにある。高時空間分解能カルシウムイメージング技術と自動細胞検出技術は、神経科学にブレークスルーをもたらすことが期待される。 SchnitzerグループのMukamel (2009)らが開発した独立成分分析(independent component analysis, ICA)アルゴリズムは、当該分野でstate-of-the-artの手法として認知されている。この研究に対抗して我々は、カルシウムイメージングデータの非負性やスパース性を取り扱うことができるGamma-Poissonモデルによる自動細胞検出技術の開発を行っている。現時点において、人工データによる評価によりある条件では、MukamelらのICAアルゴリズムを上回る精度での細胞検出が可能であることを確認している。また、in-vitroのラット海馬スライスの共焦点顕微鏡データ(東京薬科大学宮川博義氏の提供)とin-vivoのラット新皮質の二光子顕微鏡データ(沖縄科学技術大学院大学船水章大氏(本新学術領域研究公募班員))の提供)を用いた予備実験を行い、人工データと同様に実データに対しても提案手法が動作することを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題(I):改良非負行列因子分解アルゴリズムのスパース化:当初想定していたアルゴリズムと類似のアルゴリズムが複数のグループから同時期に発表されており、当該研究分野は激しい競争状態になっている。したがって、当初の計画を変更し、平成27年度実施する計画だったGamma-Poisson モデルによる自動細胞検出技術の開発を行った。 研究課題(II):Gamma-Poisson モデルの導入:変分ベイズ法の枠組みを用いて、実用的な計算量のアルゴリズムを導出した。大規模なイメージングデータが扱えるように以下のような改良を行った。1.バックグラウンド蛍光に関する拘束を導入。2.温度パラメータを導入し、決定論的過冷却を実施。3.最初に時間平均画像を差し引いたデータを用いて緩和、次に完全なデータを用いて緩和。 人工データによる評価を行い、この改良により提案アルゴリズムはMukamelらのICAアルゴリズムを上回る精度での細胞検出が可能であることを確認できた。また、in-vitroのラット海馬スライスの共焦点顕微鏡データとin-vivoのラット新皮質の二光子顕微鏡データを用いた予備実験を行い、人工データと同様に実データに対しても提案手法が動作することを確認した。 研究課題(III):ROI間相互作用を推定するアルゴリズムの構築:樹状突起が分枝している場合、撮像断面ではこれらの分枝が複数のスポットに分散する。これらの分散したスポットでのカルシウム過渡応答の時定数が異なる場合、MukamelらのICAアルゴリズムは異なる細胞の要素として検出してしまう。この研究課題は、このように異なる要素として検出したスポットが、同一細胞に属しているものかどうかを判定する基準を開発するものである。だが幸いにも、Gamma-Poissonモデルを用いると、ICAで分離してしまう要素を同一細胞として判定できることを人工データで確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題 (I):Gamma-Poisson モデルを優先して研究を行う。 研究課題 (II):前年度は、in-vitroのラット海馬スライスの共焦点顕微鏡データとin-vivoのラット新皮質の二光子顕微鏡データを用いた予備実験により、人工データと同様に実データに対しても提案手法が動作することを確認した。今年度は、多くの実データを用いて提案手法の有効性を検証する。これらの結果をまとめ、論文の執筆を行う予定である。 研究課題(III): 東京薬科大学宮川研究室では、ラット海馬 CA1 領域での「θ波領域の交流細胞外電場に対する細胞集団活動の位相引き込み」を計測している。研究課題(II)で開発したアルゴリズムを用いて、この多細胞活動データの解析を行い、位相引き込み現象の機序を明らかにする。交流電場負荷によるROI間相互作用の変化を抽出する統計的手法を、位相振動子モデルに基づいて開発する。
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Research Products
(15 results)