2014 Fiscal Year Annual Research Report
低ランク行列分解法による非経験的ナノ物性マッピング法の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
26120518
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (00372532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非負値行列因子分解 / 電子エネルギー損失分光 / エネルギー分散型X線分光 / 直交性 / ポアソンノイズ / 階層的交互最小自乗アルゴリズム / 自動的妥当性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査透過電子顕微鏡における電子エネルギー損失分光(EELS)の吸収端微細構造(ELNES)、およびエネルギー分散型X線分光(EDX)の大規模データI(E,x,y)についての非負値行列因子分解(NMF)に関して、データの特性を踏まえて改良を行った。ここで、Eはエネルギー、x,yは試料の走査面上の電子プローブ位置をあらわす。Iはその位置、エネルギーでの計数をである。典型的なデータとして、Siトランジスタ断面や二種の異なる化学結合サイトをもつMn3O4の原子分解能でのデータ等を用いた。 EELSにおいては、階層的交互最小自乗アルゴリズム(HALS)において、評価関数に空間分布の直交性付加項,とくに空間分布の直交性を加えることで,EELS-SIデータの成分分解が向上した。 一方、Mathwork社のMATLABが提供するNMFは経験的に妥当な分解結果を与えるものの、HALS等のほかのアルゴリズムでは非現実的なスペクトル形状が多く見られた。これは、非負値以外の拘束条件がなければ、複数の局所解が存在し、因子分解のアルゴリズムに依存して到達する解が異なることを示唆する。直交性などの付加項でうまくこれらを取捨してやることで、人的判断が少ないロバストな分解法として提案できると考えている。 原子分解能のEELSデータにおいては、空間的に異なる成分スペクトルが混在するため、過度な直交性はむしろ人工的なエラーを生むことを確認した。 EDXにおいては、自動的妥当性決定法(ARD)において、成分数の自動的最適化ができることを示した。さらに、計数の低いデータのノイズをより評価できるように、ベータダイバージェンスでポアソンノイズを仮定した場合,より良好な分解結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EELSおよびEDXの二種のデータの特性を踏まえた非負値分解法において課題としてきた解の一意性の問題についてその原因と対策が明確化した。これは早急に論文化をすすめる必要がある。 原子分解能のデータについては、経験的な判断に頼らず電子顕微鏡におけるシミュレーションを踏まえて分解結果を精緻に吟味する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討してきた非負値行列因子分解法を多数のEELSおよびEDXデータに適用し,これら二つのデータの特性を踏まえた上で有効な物理・化学情報取得法に発展させる.特に,原子分解能でのスペクトルデータが実験的に得ることが可能になってきており,電子顕微鏡分光面での理論とも対比できる分解結果を得ることが最終的な目標と位置づける.具体的には,以下の段階を経る予定である. (i) ノイズの取り扱いの再検討:とくにEDXデータでは,バックグラウンドが少ないため,低計数性のポアソンノイズを仮定した分解が効果的であることが分かってきた.これを実践し,EELSでのノイズの取り扱い (ii)バックグラウンドの取り扱いの再検討:これまでは,分解前処理において経験的なフィッティングで除去してきた.EELSのスペクトル強度の多くはバックグラウンドであるため,統計ノイズの素直な抽出にはバックグラウンドも取り込んだデータでの統計的分解が望まれる. (iii)原子レベルデータキューブへの適用:単純な結晶や複数サイトのある結晶で原子分解能でのスペクトラムイメージングでデータを取得し,開発してきた分解法を適用する.結果は電子顕微鏡分光分野でのシミュレーションと比較し議論する. (iV)解析ソフトウェアへの実装:合理的な分解手法の要点をまとめ,ソフトウェアに反映させる.他の研究者が取得した実験データに適用し,プログラムを公開する.
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Research Products
(2 results)