2018 年 74 巻 5 号 p. I_273-I_284
本研究では,長期の水害統計に基づいて水害リスクカーブを評価するFrequency-Damage法(FD法)について,被害が発生しない年の存在を考慮できる改良FD法を考案し,市区町村規模の小スケールへの適用可能性を検討した.全国の市区町村を対象とした従来のFD法と改良FD法の結果の比較から,改良FD法は,(1)従来のFD法における被害額期待値の過大・過小評価傾向が改善され,被害額の実績値である平均年間被害額と近い被害額期待値を算出する傾向にあること,(2)作成されるリスクカーブの形状が実績値曲線に近く,水害リスクの確率的特徴を良く反映していること,を示した.小規模な地理的スケールへの適用可能性が高い水害リスクの回帰的評価手法を開発したことで,市区町村ごとの水害リスクの要因分析や,水害リスク特徴の地域性の分析への活用が期待される.