Budget Amount *help |
¥78,520,000 (Direct Cost: ¥60,400,000、Indirect Cost: ¥18,120,000)
Fiscal Year 2022: ¥15,860,000 (Direct Cost: ¥12,200,000、Indirect Cost: ¥3,660,000)
Fiscal Year 2021: ¥15,730,000 (Direct Cost: ¥12,100,000、Indirect Cost: ¥3,630,000)
Fiscal Year 2020: ¥15,860,000 (Direct Cost: ¥12,200,000、Indirect Cost: ¥3,660,000)
Fiscal Year 2019: ¥15,860,000 (Direct Cost: ¥12,200,000、Indirect Cost: ¥3,660,000)
Fiscal Year 2018: ¥15,210,000 (Direct Cost: ¥11,700,000、Indirect Cost: ¥3,510,000)
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Outline of Annual Research Achievements |
植物体のしなやかな性質やちぎれにくい性質は、組織構造と細胞壁の性質によってもたらされる。植物細胞壁は、屋台骨に相当するセルロース微繊維と、ヘミセルロースやペクチン、細胞外プロテオグリカンなどの非セルロース性多糖類で構成される。本研究は、特に細胞外プロテオグリカンであるAGPとペクチンの分子機能に着目して、植物体に優れた力学特性が付与される仕組みを解明することを目指している。これまでに、AGPの糖鎖主鎖であるβ-1,3-ガラクタンがデキサメタゾン処理制御下で特異的に分解される植物を作出し、細胞・組織形態の制御におけるAGPの糖鎖の重要性を示した。2021年度はデキサメタゾン処理制御下でβ-1,6-ガラクタン側鎖が分解される植物を作出し、AGPの糖鎖の中でもβ-1,6-ガラクタン側鎖が重要であることを明らかにした。 AGPの糖鎖に特異的に結合する阻害剤であるヤリブ試薬を利用して、この阻害剤への応答が異なるシロイヌナズナの変異体をスクリーニングした結果、既存の細胞壁変異体の一つがヤリブ試薬に部分的な耐性を示すことがわかった。加えて、ヤリブ試薬で起きる細胞壁の変化を根で詳細に解析したところ、ヤリブ試薬処理でセルロース合成が攪乱されることがわかり、AGPのセルロース合成への関与が強く示唆された。 ペクチンがもつHGとRG-I 、RG-IIの3領域のうち、特にRG-Iに焦点をあてて、細胞接着や細胞形態の制御における働きを調べている。RG-Iの側鎖の合成に異常をもつ変異体がRG-IIと同様の変化を示すことがわかり、RG-Iが部分的にRG-IIと重複した機能をもつことが示唆された。最終年度は、植物体に優れた物理的性質が付与される機構におけるRG-Iの重要性を組織の免疫染色や走査型顕微鏡による表皮組織の観察、透過型顕微鏡による細胞接着の観察から明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、研究項目「優れた力学特性を生む細胞伸展性・形態形成の自律的制御機構の解明」では、β-1,6-ガラクタン側鎖が特異的に分解される植物を作出し、この構造がAGPの機能に重要であることがわかった。また、ヤリブ試薬のAGPの機能阻害による根の細胞伸長阻害や組織形態の乱れが、セルロース合成の異常・攪乱によって起きている可能性が示された。加えて、セルロース合成に関連した細胞壁変異体がヤリブ試薬に部分的な耐性に示すことも明らかになり、順調に進展していると判断した。研究項目「力学的最適解を生む細胞接着の形成・キャンセル制御機構の解明」では、細胞成長で生じるひずみへの表皮細胞の応答を評価しやすくするために、急速な成長が起こる暗所胚軸を解析対象に変更した。この結果、ペクチンのラムノガラクツロナンII(RG-II)が異常な変異体とともに、RG-Iの側鎖合成が異常な変異体でも、植物体物性の変化や組織形態の乱れをみることができた。一方で、この変異体で見られた胚軸の物性変化や組織形態の乱れがRG-Iの側鎖の異常によるものかを遺伝子相補実験や時空間的な発現解析で確認できておらず、確定的な考察ができていない。またRG-Iの細胞接着や細胞形態制御への関与を当初から予測していたが、これらを確認する観察が完了していない。研究項目「重力に抗する植物の動的な体作りの仕組みの解明」については、2021年度は複数のペクチンの変異体について、1 g環境下と遠心過重力下で胚軸の成長を調べたところ、RG-II合成に関わる変異により顕著な成長阻害が起こるが、RG-Iの側鎖合成に関わる変異を加えても(二重変異体でも)それ以上の成長阻害は起こらないことがわかった。このことは、RG-IIに対してRG-Iは補助的に機能することを示唆しており、今後はRG-IIとRG-Iの機能上の関係を整理する必要がある。
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