Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
19H05781
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Complex systems
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Research Institution | Tohoku University (2020-2022) Institute of Physical and Chemical Research (2019) |
Principal Investigator |
南後 恵理子 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90376947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 伸隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (20450934)
大和田 成起 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 研究員 (90725962)
宮下 治 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 上級研究員 (10620528)
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00593550)
篠田 恵子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (80646951)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥203,060,000 (Direct Cost: ¥156,200,000、Indirect Cost: ¥46,860,000)
Fiscal Year 2023: ¥44,980,000 (Direct Cost: ¥34,600,000、Indirect Cost: ¥10,380,000)
Fiscal Year 2022: ¥42,120,000 (Direct Cost: ¥32,400,000、Indirect Cost: ¥9,720,000)
Fiscal Year 2021: ¥41,730,000 (Direct Cost: ¥32,100,000、Indirect Cost: ¥9,630,000)
Fiscal Year 2020: ¥35,620,000 (Direct Cost: ¥27,400,000、Indirect Cost: ¥8,220,000)
Fiscal Year 2019: ¥38,610,000 (Direct Cost: ¥29,700,000、Indirect Cost: ¥8,910,000)
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Keywords | X線自由電子レーザー / 動的構造解析 / 蛋白質結晶構造解析 / X線溶液散乱 / シリアルフェムト秒結晶構造解析 / タンパク質ダイナミクス / 溶液散乱 / 構造モデリング |
Outline of Research at the Start |
X 線自由電子レーザー(XFEL)を用いたタンパク質構造解析法は、タンパク質が起こす素早い反応・構造変化を原子レベルまで捉えられる新たな手法として、国内外で非常に期待されている。本研究計画では、XFELによって多種多様なタンパク質の構造変化や反応過程を捉えるための技術開発を行う。本技術により、生体分子の機能やその機構に対する理解が飛躍的に深まると共に、構造情報に基づく生体分子制御の応用に貢献することが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いてタンパク質が機能する際の構造変化過程を高い空間・時間分解能で捉える技術の開発を行っている。当該年度は、新たな時分割実験手法として近赤外レーザーによる温度ジャンプ法の開発を引き続き行った。また、結晶を必要とする制約のない溶液を用いた実験を可能とするため、溶液散乱測定系の検討を行った。温度ジャンプ法の開発では、温度上昇量の定量的評価を行うためのナノ秒時間分解顕微温度イメージング装置及び時分割測定装置を開発し、それらを用いて実試料による実証実験を行った。可視光を吸収して熱を発する化合物を添加して温度ジャンプ実験を行ったところ、15℃程度の温度上昇が確認された。また、リゾチーム結晶を用いた測定ではレーザー照射後一定の遅延時間後のXFELによる回折データの解析により格子長の変化が見られることがわかった。溶液散乱実験においては、ベヘン酸銀、ニワトリ卵白アルブミン、ウマ心筋チトクロムCなどを用いて実施した。本来、溶液試料による小角X線散乱測定では、観測可能な最も低角となるビームストッパー脇のビーム強度が最大となるはずだが、その領域の強度が近接する広角側と比べて低くなっていた。この現象に対する原因は、XFELにより試料溶液が蒸発し、ダイレクトビーム周辺に生じた水蒸気の影響で散乱強度が減衰しているのでは無いかと推測された。その状況の検証と緩和のためにヘリウムガスの流量など種々検討を行った。また、流路型二液混合インジェクターを用いた混合実験も実施した。時間に応じて変性構造への変化を示す散乱曲線の変化が観測された。現在、タンパク質試料散乱データ詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は温度ジャンプ法による時分割実験の装置や技術開発を中心に進め、実際にSACLAにてタンパク結晶試料を用いた実験実施に至ることができた。本実験には、顕微温度イメージング計測にて、高い時空間分解能の温度上昇の評価が必要であるが、液体ジェットによる試料輸送方法だけでなく、高粘度試料インジェクターの場合についても検討し、その方法を確立しつつある。高粘度試料インジェクターを利用できると、試料必要量を大幅に削減できるため、本法の汎用性が高まる。また、低温で反応を停止しておいて、温度上昇を反応開始剤とするための試料付近の温度制御装置の開発も進め、実際の実験においても試料の温度を一定に保つことを確認することができた。可視光吸収剤を利用するなどの高い温度上昇を可能とするための検討も進めており、試料に適した良好な条件を見出している。従って、酵素や受容体などを用いた実験を行う基盤整備は達成できたといえる。また、XFELによる溶液散乱測定系の開発に関しては、ややバックグラウンドレベルが高く、特に低角側の散乱強度の低下があるという問題が生じているため、その改善策を導入し検証を行っている。より少ない試料量でデータ取得を可能とするために測定装置の開発を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
光励起以外の反応誘起法としては、今までに基質と微結晶を迅速に混合する二液混合法が知られているが、試料必要量の多さや時間分解能の低さが障壁となっている。そこで、これらの問題を解決するために、新たな試料輸送法やインジェクターの開発を進めていく。新たな試料輸送法としては、ベルトコンベア方式で試料を輸送しながら、ベルト上で結晶と基質溶液の二つの溶液を混合するなどの方法を予定している。また、温度ジャンプ法による時分割実験の開発においては、引き続き技術開発を進めると共に、例えば酵素反応の可視化などの応用を検討する。温度上昇を反応開始剤として時分割シリアルフェムト秒結晶構造解析を行った例は他にはなく、これが可能となると上記の二液混合法における問題も解決できる可能性がある。溶液散乱実験については、低角付近の散乱強度低下を防ぐために真空チャンバーの検討などを行うと共に迅速なデータ解析を行うためのソフトウェア開発についても検討を進めていく。
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