Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
20H05840
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梶 弘典 京都大学, 化学研究所, 教授 (30263148)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥134,550,000 (Direct Cost: ¥103,500,000、Indirect Cost: ¥31,050,000)
Fiscal Year 2022: ¥19,370,000 (Direct Cost: ¥14,900,000、Indirect Cost: ¥4,470,000)
Fiscal Year 2021: ¥52,780,000 (Direct Cost: ¥40,600,000、Indirect Cost: ¥12,180,000)
Fiscal Year 2020: ¥23,400,000 (Direct Cost: ¥18,000,000、Indirect Cost: ¥5,400,000)
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Keywords | 動的エキシトン / 分子設計 / 逆項間交差 / スピン軌道相互作用 / フェルミの黄金律 / 一重項分裂 |
Outline of Research at the Start |
有機分子の励起子に対する基礎科学の確立は、広く自然界の現象を理解するために重要である。我々は、従来の常識では起こりえないと考えられていた電荷移動(CT)性三重項からCT性一重項への逆項間交差(RISC)が極めて効率よく起こりえることを実験的に示し、ごく最近、この原因が励起子の「動的」効果によるものであることを解明しつつある。本研究では、このRISCに関する基礎的理解を目指すとともに、一部、展開し始めている一重項分裂(SF)等を含めた諸現象にも拡張し、「動的」エキシトンの学理構築に挑戦する。また、領域内の密な融合により、この学理を深化させるとともに、高特性新規材料、新概念・原理の開拓に繋げる。
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Outline of Annual Research Achievements |
1) 従来起こりえないと考えられていた電荷移動(CT)性三重項からCT性一重項への逆項間交差(RISC)が、ゆらぎ効果により高効率化することを論文化した(ChemPhysChem, 22, 625 (2021))。2) 1)の分子は、HOMOとLUMOの分離から振動子強度fが小さいと予想され計算でもゼロであったが、実測のPLQYは100%であった。この点、効率的な発光が分子振動によることを理論計算により解明した(J. Phys. Chem. A, 125, 4534 (2021))。3) 昨年度とは異なる設計指針により、10^8 s^-1を超える世界最速レベルのRISCを実現した(Appl. Phys. Express, 14, 071003 (2021))。4) TADF材料の設計を、これまでΔEstとf値の観点からスクリーニング手法を構築してきたが失敗に終わる場合も多かった。今回、その原因となる、スピン軌道相互作用、分子振動の影響、無輻射失活、複数準位の考慮、を含めた包括的な計算手法の開発に成功した(J. Phys. Chem. A, 125 9000 (2021))。5) 英国、ドイツ、中国、韓国との共同研究を進めた(J. Org. Chem., 86, 11531 (2021); Beilstein J. Org. Chem., 17, 2894 (2021); Adv. Sci., 2106018 (2022))。また、学内共同研究も進めた(J. Am. Chem. Soc., 143, 17388 (2021))。6) これまでの共同研究に加え、今回、上記4)の手法を三ツ沼グループとの共同研究に展開した。また、領域代表の今堀を中心に、班長の小堀と梶とで、領域のコンセプトを総説としてまとめた(Acc. Mater. Res., 2, 501 (2021))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1) El-sayed則に反するため、従来の常識では起こりえないと考えられていたCT性三重項からCT性一重項へのRISCが極めて効率よくRISCが起こることを実験的に示し、その原因が、動的・静的ゆらぎ効果にあることを解明したこと 2) 振動子強度がゼロで光らないと考えられる分子に対し、実験的に発光量子収率100%を得るとともに、その発光が分子振動に起因していることを明らかにしたこと 3) 昨年度のtFFO設計で得られた10^7 s^-1のRISC速度定数を、全く異なる分子設計指針により一桁速い10^8 s^-1という極めて速い逆項間交差速度を得たこと 4)さらに、これまでのΔEstとf値ではなく、さらに精密な分子設計を可能にする高速計算手法の開発に成功したこと 以上から当初の計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ問題点等は生じておらず、その意味では計画変更はない。一方、当初の研究内容としては、RISC速度定数の定量的予測のみであったが、これをさらに高度化できたのみならず、RISC、ISC、輻射緩和、無輻射緩和、内部転換といった高次エネルギー準位も含めた発光に関与するすべての準位間の速度定数計算を可能にした。この点を、当初の研究計画に加え、さらに発展させる。また、この研究が、本学術変革領域、三ツ沼グループとの共同研究に有効であることが示されつつあり、その展開も研究計画に加えることとした。
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