地震のサイクルにおける断層の強度回復と透水性の変化
Project/Area Number |
00F00046
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
Geology
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Research Institution | Kyoto University |
Host Researcher |
嶋本 利彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Foreign Research Fellow |
WIBBERLEY Christopher A. J. 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
WIBBERLEY C. A.
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Project Period (FY) |
2000 – 2002
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2002)
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Budget Amount *help |
¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 断層 / 浸透率 / 地震 / 中央構造線 / 流体 / thermal pressurization / 摩擦加熱 / 臨界すべり量 |
Research Abstract |
C.A.Wibberley氏の研究の目的は、地殻内の流体が地震の発生に与える影響を理解するために、断層破砕帯の変形および流体移動に関する性質を調べることであった。同氏は、三重県飯南郡飯高町の有名な月出露頭(近く国の天然記念物に指定される予定)において、日本列島内陸部で最大の断層である中央構造線・断層帯の内部構造と変形機構を詳しく解析した。同氏はさらに、京都大学のガス圧式変形透水試験機を用いて、この断層帯から採取した多数のサンプルの浸透率と貯留係数を測定した。中央構造線は中生代以降長期間にわたって活動しており、この断層沿いには様々な深さで形成された多様な断層岩(マイロナイト、カタクレーサイト、未固結断層岩)が形成されている。Wibberley氏は、巨大断層が複雑な浸透率構造(流体移動に関する断層帯の内部構造)をもつことを明らかにし、断層帯の浸透率構造に関する最も詳しい測定データを提供した。 地震時に断層が高速で動き始めると、断層帯の水が摩擦熱を吸収して体積膨張をおこし、流体圧が上昇して断層が急速に強度を失って、断層運動がさらに加速される可能性は古くから指摘されていた。この現象はthermal pressurizationと呼ばれているが、これまで断層帯の貯留係数が測定されていなかったために、摩擦熱による流体圧の上昇量を見積もることができなかった。Wibberley氏は、測定結果をMase and Smith(1987)の理論に適用して、中央構造線・断層帯の中心部では流体が極めて通りにくいために、thermal pressurizationが起こった可能性が極めて高いことを示した。地震は、断層がすべることによって強度を失い(断層沿いのタガが外れ)、断層に働く地殻応力に耐えきれなくなって発生する。従って、断層がすべるにつれてどの程度早く強度を失うかが、地震時の断層の挙動を決めることになる。過去20年近く、地震波の解析では強度低下がおこり続けるすべり量(臨界すべり量、D_c)は1m前後に決まることが多いのに対し、通常の摩擦実験で決まるD_cは数10μmで、両者の間に数桁の違いがあることが大きな謎であった(D_cパラドックス)。Wibberley氏の研究の結果、thermal pressurizationが起こる場合にはD_cが数100mmから1m程度になることが初めて示され、摩擦熱を考慮することによってDcパラドックスが解決する可能性がでてきた。この結果は、主に米国の研究者から注目を集めている。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)