Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度は、界面分子インプリント法により調製した人工酵素ポリマーが触媒活性を示す必要条件を検討した。これまでに、調製した触媒ポリマーがアミノ酸エステルの加水分解を触媒し、さらにポリマー表面に記憶させた分子を特異的に触媒することが判明している。また、計算化学を用いた調査から、認識部位の構築には機能性分子の界面配向性や鋳型分子の側鎖の嵩高さが重要であることが推察された。つまり、ポリマー表面にいかに強固な認識部位を構築するかが、基質を選択的に取り込むためのポイントとなる。まず、機能性分子として界面吸着定数の高いイミダゾール誘導体と低いイミダゾール誘導体を用いて人工触媒ポリマーを調製した。それぞれの触媒特性を比較したところ、界面吸着定数の高い分子で調製したポリマーの方が明らかに高い触媒活性を示した。界面分子インプリント法は、エマルション油水界面を利用してポリマー表面に認識部位を構築する手法である。界面吸着定数の高い分子はポリマー表面に固定されるため、認識部位がポリマー表面に形成される。しかし、界面吸着定数の低い分子で形成される認識部位はポリマーマトリクス中に埋もれてしまう。ポリマー表面に存在する認識部位は基質を取り込む速度も大きくなり、触媒速度もおおきくなったと推察される。また、界面分子インプリント法で調製したポリマーは、機能性分子を含むインプリントポリマーの膨潤度が低いほど分子認識効果が高いことが知られている。機能性分子として用いたオレイルイミダゾールはポリマーの膨潤を防ぐことが明らかとなり、強固な認識部位が形成されていることが推察された。本研究で調製した人工酵素ポリマーは、分子認識能と触媒能を合わせ持つことから天然酵素に類似した機能を有する。それだけでなく、架橋したポリマーであるために、天然酵素が失活する有機溶媒中や高温の条件下でも使用が可能であり、非常に魅力的な機能性ポリマーである。
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