Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.卵成熟および排卵・受精過程におけるスンクスの卵丘-卵複合体の形態に関する研究。スンクス精子の先体反応を誘起する卵丘細胞層および多精防止に関与する透明帯の機能を明らかにするために、排卵前後および受精前後におけるそれらの形態的特徴を微細構造的に明らかにした。その結果、卵丘細胞の細胞内小器官、卵丘細胞の外形、および隣接する細胞の接合様式に、一般哺乳類ではみられない本種に固有の受精様式を裏付ける特徴が観察された。また、透明帯においても、排卵前後に透明帯外層の形態が変化し、受精時に先体を欠く精子の侵入を可能にする形態的特徴が観察された。2.透明帯の耐性実験。一般哺乳類に比して柔軟な特徴をもつスンクスの透明帯の化学的特徴を明らかにするために、スンクスの未受精卵、スンクスの受精卵、およびマウスの未受精卵の透明帯に、trypsinまたはdithiothreitolを反応させ、それぞれの透明帯の反応性を観察した。その結果、スンクスの未受精卵の透明帯は、これらの物質に比較的耐性が低いことが明らかになり、このことは、卵丘細胞層で先体反応を起こした本種精子が透明帯を機械的に通過するという仮説をさらに確かなものとした。さらに本種において透明帯が多精の防止を行うことが明らかにされた(日本動物学会第73回全国大会)。3.透明帯のタンパク質分析。透明帯の構成を調べるために、スンクス透明帯のSDS-PAGEを行い、マウスのそれと比較した。その結果、スンクスとマウスの透明帯において、タンパクの構造が異なることが明らかになった。4.精子先体のタンパク質分析。先体反応によって卵丘細胞を壊死させるスンクス精子先体のタンパク質分析を行った。その結果、本種精子の先体には、一般哺乳類ではみられない50kDaのタンパク質が多く含まれることなど、本種精子の特異的な先体反応を説明するための要因が解明されつつある。