Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度の研究実績としては、まず先年までに発表・執筆を行った論文「中世日朝関係における後期受職人の性格」に修正・加筆し、『日本歴史』に投稿を行った。結果、掲載されることが決定した。また、先年に投稿を行った論文「中世後期における壱岐松浦党の朝鮮通交」が『九州史学』134号に掲載された。本年度は上記の執筆活動の他に、朝鮮前期における日本人通交者の犯罪と処罰に関する史料の集積・分析を行った。これにより、明らかにされていないいくつかの興味深い事例を指摘することができた。まず、使者として朝鮮へ来朝する通交者の犯罪に対して朝鮮は「日本人犯罪論決之法」を制定して対処していたことが明かとなった。また、朝鮮へ投降・居住した「向化倭人」と呼ばれる日本人に対しても、朝鮮国民と同様に法を適用して処罰していることが確認できた。日本人居留地「三浦」に居住する「三浦恒居倭人」に関しては、先行研究において、その検断権が朝鮮ではなく対馬宗氏に付託されていたことが明らかにされているが、これとは明らかに相違する状況が存在していたことになる。さらに、成宗期における倭冠と三浦恒居倭人に関する取り締まりを通して、朝鮮と対馬との関係が明確に転換していく状況を明らかにすることができた。具体的には処罰の要請とその実行を通した友好的な関係が、対馬から逃亡した中国人の告発により、対馬の詐欺行為の露呈、朝鮮側の不信感の増大へと進み、最終的に日本人(特に三浦恒居倭人)に対する朝鮮の態度硬化、その反動たる三浦の乱へと結びつくと結論づけた。この研究については、研究会等において口頭発表を行い、多くの貴重な意見を聞くことができた。これにより、研究の主題をより意義深いものに位置づけることができ、さらに発展・深化させる足掛かりとすることができた。
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