Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、自己評価動機の顕現化が、自己に関連した情報の収集行動としての他者選択に及ぼす影響と、その選択の結果として自己にどのような影響が生じるのかを、精神的適応感を指標として検討するものである。本年度は、ある状況下において顕現化する自己評価動機の種類と、実際に選択する他者の属性に、低自尊心者ではズレが生じることについて、マインドセット理論で用いられる考え方を基にして、検討を行った。とりわけ本年度は、マインドセット理論を用いた検討において、低自尊心者が適切に自己評価過程に従事できないことの解明を行った。その結果、低自尊心者は自己評価過程において、長時間の熟慮を行うと、自己を正確に知りたいという自己査定動機と、自分自身の悪い面に目を向けたくないという自己防衛動機が拮抗的に顕現化することが明らかとなった。しかしながら、その際に行う他者選択のパターンは、顕現化した全ての自己評価動機を満たすようなものではなく、自己防衛のバイアスの影響を強く受けた、客観性の乏しい人物の選択を主に行うことが明らかとなった。このことにより、判断の質の低下などの、低自尊心者が日常示す様々な社会的不適応状態を自己評価過程の観点から明らかにする事ができたといえる。これに加えて、日常生活における自己評価過程と他者選択との様相を明らかにするために、看護学校卒業後6年以内の看護師にアンケート調査を行い、学生時代からの対人資源である学校時代の友人との関係性が、卒業後どのよう変化するのかの検討も行った。なお、これらの研究成果は、2002年7月に開催された国際応用心理学会議(於:シンガポール)や2002年11月に開催された日本社会心理学会(於:一橋大学)等の諸学会で発表した。また、学位請求論文の一部として、その内容を広島大学大学院生物圏科学研究科に提出した。
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