Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、ダイオキシン類が免疫系に作用し免疫不全症を引き起こす原因や、その作用機構を解明することにある。これにより、ダイオキシン類による免疫不全症に対処する方法を確立するための基盤となることを目指した。全体計画は、胸腺内のリンパ球がダイオキシン投与によって受ける影響についての解析を主にし、Ahレセプターとの関連や、リンパ球組織のもととなる骨髄造血幹細胞への影響について検討する予定でスタートし、最終的に以下のようなことを解明した。昨年度報告したように、C57BL/6マウスを用いた実験では、ダイオキシンを一回経口投与すると、胸腺内細胞数は、胸腺の急激な萎縮とともに投与後2週間で約10%にまで減少した。そのメカニズムについて様々検討した結果、それらの現象はCaspase非依存性の細胞死であることを強く示すことができた。また、造血系を長期にわたり再構築することができる造血幹細胞に関して、ダイオキシン類の影響を検討した結果、造血幹細胞数は、ダイオキシン一回投与により12時間後から有意に増加し始め、2週間後には約3〜4倍にまで増加した。それら細胞の長期再構築能を確認するために移植実験を待ったところ、TCDD投与群からの造血幹細胞移植マウスには、ドナー由来の細胞を検出することができなかった。またin vitroコロニーアッセイの結果からも、TCDD投与群の造血幹細胞はコロニー形成能が著しく阻害されていた。さらにAhRノックアウトを用いて検討した結果、これらの影響はAhRを介していることがわかった。すなわち、TCDD投与により造血細胞は表面マーカー上増加しているように見えるが、その再構築能はAhRを介してほぼ完全に阻害されていることが判明した。今後、これらのメカニズムを解明することは、幹細胞システム生物学の発展に寄与し、再生医療に応用可能な知見やダイオキシンによる免疫不全症に対処するための知見へとつながることが期待される。
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