Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ニューロトロフィン、時にBDNF (brain-derived neurotrophic factor)などの神経栄養因子は中枢神経系のシナプス可塑性に重要であり、神経伝達機能への影響が注目されている。これまでの研究で、私は、BDNFによって培養中枢神経細胞よりグルタミン酸放出が引き起こされることを見出した。グルタミン酸は脳各部位において、重要な神経伝達物質として働いており、興奮性の伝達を司る。通常、神経伝達物質放出には細胞の脱分極に伴ういわゆる開口放出が必要とされる。私は、BDNFによるグルタミン酸放出作用には、開口放出機構とは異なるメカニズムであるグルタミン酸トランスポーターの逆転が関与していることを見出した。次に、このグルタミン酸放出システムがニューロンのネットワークレベルでどのような機能を果たしているかを調べるために、ネットワークの機能評価としてニューロン間で同調するカルシウムのオシレーションを用いた。生後2日齢ラット大脳皮質ニューロンを培養すると、培養後5日より顕著な同調カルシウムオシレーションが観察される。このオシレーションはグルタミン酸による自発的な神経伝達を示していた。そこにBDNFを添加すると顕著なオシレーションの頻度の上昇がみられた。このBDNFによるオシレーション増強にはやはりグルタミン酸トランスポーターの逆転が関与していることが明らかとなった。BDNFの受容体(TrkB)を介した細胞内シグナルには主に、MAPK、P13KおよびPLC-γ経路が知られている。詳細な解析により、BDNFによるグルタミン酸放出作用はPLC-γ経路活性依存的であることが明らかとなった。BDNF以外の栄養因子の神経伝達機能への影響について詳しい解析はほとんどなされていない。私は、bFGF (basic fibroblast growth factor)が培養大脳皮質ニューロンにおいて、グルタミン酸放出を引き起こし、それには開口放出機構が重要であることを見出した。また、bFGFはMAPK経路の活性化により神経伝達の制御を行っていることも見出した。
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