Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
1.大阪大学産業科学研究所の電子線形加速器から得られる低速陽電子ビームを用いた陽電子寿命測定システムについて、昨年度に引き続き時間分解能等装置性能の向上を行った。バンチ波形は以前調整されたものを使用したが、そのオフセット電圧を調整することによりバンチされた陽電子の飛行時間を調整した。その結果、時間分解能として最小290ピコ秒を得ることができた。また、検出器周りの磁場遮蔽の幾何学的構造の変更や、電子線の強度を増加させることにより、陽電子計数率を増加させるとともに寿命スペクトルのS/N比を500程度から2500程度へ大幅に向上させることができ、より信頼性の高い装置を構築することができた。2.高分子薄膜界面付近の構造を自由体積の視点から調べるため、poly(4-hydroxystyrene) (PHS)、polystyrene (PS)の二層膜を形成し、上述の装置を用いて陽電子寿命の深さ依存性を測定した。PHSではポジトロニウム形成を抑制することが知られており、それを示す結果が得られたが、PHS層においては性質の異なる2つの層が形成されていることが示唆された。また、ケイ素骨格高分子薄膜上に金を蒸着したものに対して同様の測定を行った。poly(methylphenylsilane)において、金コロイドの薄膜中への拡散が報告されているが、ポジトロニウム形成量が薄膜内部でも変化しており、金蒸着によって薄膜内部の構造を変化させることが示された。これらの詳細な機構については今後の検討課題である。3.高分子中において陽電子と電子の束縛状態であるポジトロニウムの形成に関する理解を得るため、低温PMMAについて線源ベースの陽電子寿命測定を行い、放射線照射によるポジトロニウム形成確率の時間依存性、温度依存性などと赤外-紫外吸収分光測定結果との比較検討を行った。PMMAでのポジトロニウム形成量がPMMAアニオンラジカルと相関があることから、ポジトロニウムは、放射線照射によってたたき出された電子と陽電子が直接結合したり、あるいはその電子がPMMA(あるいは分解したMMAモノマー)に浅く捕獲されて比較的安定に存在し、その電子を陽電子が引き抜くことによって形成されることがわかった。
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