Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
低分子量G蛋自質Rasとその標的タンパク質セリン/スレオニンキナーゼRaf1の相互作用は、細胞増殖、分化において重要な情報伝達反応の一つであるが、増殖・分化刺激後の細胞内における両者の時空間的な情報伝達反応の様相は詳しく解析されていない。そこで、上皮成長因子(EGF)刺激後のRas/Raf1相互作用反応特性を明らかにするため、蛍光タンパク質(GFP)を融合させたRasとRaf1を細胞内で可視化し、多分子平均観察、1分子観察の異なる2つの方法でそれらの挙動を解析した。多分子解析により以下の点が明らかになった。(1)刺激後のRasとRaf1の相互作用反応は細胞膜上で空間的に不均一に起きた。RasとRaf1が特に濃縮して60分以上も反応を持続させる部位が局所的に現れ、そこからは膜ラッフルが形成された。(2)EGFが細胞膜上に均一に結合しているにもかかわらず、一部の細胞膜部位に存在するRasはRaf1と相互作用しなかった。これらは、外部刺激が細胞膜に一様に入力されても、Rasの活性化や、RasからRaf1への情報伝達反応が細胞膜の場所により異なる事を示唆している。一方、1分子解析により、(1)EGF刺激前後に関わらずRasとRaf1は細胞膜と細胞質を行き来し、膜上滞在時間の時定数は数百ミリ〜数秒であった。(2)RasとRaf1の相互作用反応が特に持続した膜ラッフルの様な部位でも、個々のRasやRaf1分子は数秒以内に入れ替わっていた。これらは、個々のRasとRaf1の膜上の相互作用はせいぜい数秒間しか維持されない動的な反応であることを示している。以上の結果から、Ras/Raf1細胞内情報伝達反応は、個々の分子を秒オーダーで入れ替えながら、分子間相互作用反応を局所的に数十分間にもわたり維持する動的で不均一な性質を持つことが明らかになった。
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