Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
TiO_2やAl_2O_3ナノ粒子の懸濁した水溶液にγ線を照射すると純水の放射線分解で発生するよりも多量の水素ガスが発生する現象について、水素発生が促進されるメカニズムについて検討した。水素発生メカニズムは、水の放射線分解により生成する活性種がナノ粒子表面において反応する過程と、ナノ粒子中に生成する電子正孔対の酸化還元反応による過程からなり、前者がより支配的であることが示唆された。また現在得られている水素ガスの製造効率について、太陽光を利用した光触媒反応による手法との比較した。1時間あたりの水素発生効率は太陽光エネルギーを利用した光触媒反応による手法の方が高いことが分かった。しかし1日あたりに換算すると、γ線エネルギーの利用では日照時間や天候に依存しないため、水素発生効率はγ線を利用した方が高くなる。γ線エネルギーとナノ粒子材料を利用した水素ガスの製造は、将来的な実用化の可能性を秘めているといえる。フェノール水溶液のγ線照射による無機化に及ぼす、TiO_2及びAl_2O_3ナノ粒子の添加効果についても調べた。残留フェノール濃度は懸濁ナノ粒子の有無によらずほぼ同じであったが、残留有機炭素濃度はナノ粒子の存在下で減少した。照射後、液相中にフェノールにOH基が付加した化合物が生成することを確認しており、TOC濃度の現象はこれらの付加化合物がナノ粒子表面に吸着したことが主な原因である。しかし、ナノ粒子を懸濁させてγ線を照射したフェノール水溶液と照射後にナノ粒子を加えたフェノール水溶液を比較すると、前者の方がより効率的に有機炭素を除去できていることが分かった。従って、ナノ粒子はフェノールの無機化反応に寄与していることが確認された。有害有機物質の放射線分解において、ナノ粒子を懸濁させることで水溶液中の環境汚染物質を選択的にかつ効率的に除去できる可能性が示唆された。
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