Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
高度な効果と選択性をもつ医農薬や優れた性質を持つ液晶などの機能性有機材料への関心が高まるにつれ、遷移金属触媒を用いるアリール基導入反応はその重要性が益々高まっている。申請者は、これまでにパラジウム触媒存在下、α,β-不飽和カルボニル化合物を芳香族臭化物とともに処理すると、γ位にアリール基が導入されることを見い出し報告している。また、同様の条件下、フェニルアルキルケトンを過剰の芳香族臭化物とともに処理したところ、エノラート酸素のアリールパラジウム種への配位を鍵とした芳香環へのアリール化が進行することを見い出している。今回、ベンジルアルコール類を用いた場合にもアルコール性酸素のパラジウムへの配位を鍵とする芳香環へのアリール化が起こるのではないかと考え検討を行った。その結果、予期した芳香環へアリール化が起こるだけでなく、適切なアルコール基質を用いることによりsp^2炭素-sp^3炭素結合開裂をともなってアリール化が進行し、ビアリールが生成することを見い出した。一例として、2-(2-メトキシ-1-ナフチル)-2-プロパノール(0.5mmol)ならびにブロモベンゼン(0.6mmol)を基質として用い、Pd(OAc)_2(0.005mmol)およびPPh_3(0.02mmol)存在下、塩基としてCs_2CO_3(0.6mmol)を用いo-キシレン還流下で24時間処理したところ、2-メトキシ-1-フェニルナフタレンが92%の収率で生成した。現在、ビアリール骨格の合成法として、パラジウムあるいはニッケル触媒を用いたトランスメタル化を経る、芳香族ハロゲン化物と様々なアリール金属試薬とのクロスカップリングが、しばしば用いられている。今回見い出した反応は、アリール金属種を用いない触媒的アリール-アリールカップリングの新手法として有用であると考えられる。