Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
HHV-8は、カポジ肉腫組織から遺伝子断片がクローニングされたガンマヘルペスウイルス亜科に属するウイルスである。HHV-8のORF57遺伝子は潜伏感染から再活性化する際に初期遺伝子として発現する遺伝子であり、単純ヘルペスウイルスのICP27遺伝子と相同性があることから、転写後調節因子として他の遺伝子の発現調節に働くことが予想されているが、その詳細は明らかになっていない。そこでHHV-8 ORF57遺伝子の機能解析を行うために、ORF57にコードされているタンパク質に対する抗体を作成し、感染細胞内でのORF57の発現動態を確認するとともに、yeast two-hybrid法を用いてORF57タンパク質と細胞内で相互作用するタンパク質のクローニングを試みた。作成したORF57に対する抗体を用いて、HHV-8が潜伏感染したBC3細胞内でのORF57タンパク質の発現を調べた結果、潜伏感染状態ではほとんど発現が確認されていないのに対し、TPAで再活性化を誘導した24時間後には5割以上の細胞で発現が確認された。このことから、ORF57は再活性化によって発現が強く誘導されてくる遺伝子であるということが明らかになった。次に、yeast two-hybrid法を用いてORF57タンパク質と細胞内で相互作用するタンパク質のクローニングを試みた結果、11個の陽性クローンが得られた。その中で、細胞の持つ転写後調節因子であるpoly(rC)-binding protein (PCBP1)が、実際にORF57タンパク質と直接もしくは間接的に結合するということを、GST pull down法を用いて明らかにした。PCBP1はinternal robosome-entry site (IRES)依存的な翻訳調節に関係することが明らかになっていることから、この発現調節にORF57が関与するかを調べた結果、ORF57はPCBP1によるIRES依存的翻訳活性化をさらに増強する機能を持つことが明らかになった。以上の結果から、ORF57はウイルスの再活性化の際に発現が誘導された後、PCBP1と相互作用することによって、IRES依存的な翻訳調節を介して、転写後調節因子として様々な遺伝子の発現を調節しているということが明らかになった。