Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究はアポリポタンパク質によるHDL新生メカニズムをシグナル伝達系の面から解析し、この機序の分子的基礎を築くことを目的としている。今年度の研究により以下の結果が得られた。1.ヒトの線維芽細胞株WI-38において、apoA-IはABCA1のタンパク質レベルを上昇させたが、ABCA1のmRNAレベルは上昇させなかった。タンパク質合成を阻害してもapoA-IはABCA1のタンパク質レベルを上昇させたほか、ABCA1をRI標識してその分解を観察した結果、apoA-Iはその分解を抑制した。したがって、apoA-IはABCA1の分解を抑制し、その安定化を引き起こすことが明らかとなった。2.apoA-Iと同様、カルパイン阻害剤はABCA1の分解を抑制した。3.Protein kinase C (PKC)阻害剤はapoA-IによるABCA1の安定化を抑制し、apoA-I依存的な脂質の放出も抑制した。一方、PKC活性化剤はABCA1のタンパク質レベルを上昇させた。4.PC-PLCの阻害剤は、apoA-IによるABCA1の安定化とapoA-I依存的な脂質の放出を抑制した。5.WI-38にGFPを結合したPKCαを発現させ、その活性化を顕微鏡下で観察した。その結果、apoA-I刺激によってGFP-PKCαは細胞質から細胞膜などへ移動し、この移動はPKC阻害剤によって完全に抑制された。したがって、apoA-IがGFP-PKCαを活性化することが明らかになった。6.WI-38においてPKC活性化剤はABCA1のリン酸化を促進した。また、apoA-I刺激によってもABCA1のリン酸化は促進された。以上の結果より以下の結論を得た。apoA-Iは細胞と相互作用することでPC-PLCを介してPKCαを活性化し、この活性化によってABCA1の安定化とABCA1のリン酸化が誘導され、HDL新生反応が促進されることが示唆された。
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