Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
ヘム酵素は生体内に広く存在することが知られており、呼吸、エネルギー合成、代謝などの種々の生体反応を担っている。これらのヘム酵素は、いずれもヘム(ポルフィリン鉄錯体)を活性中心として持っているが、その機能は多岐にわたっている。ヘム酵素の持つ機能を制御する重要な因子として配位する軸配位子とヘム自体の非平面化が挙げられる。本研究では、この二つの要因が酵素の反応中間体の電子構造と反応を制御していると考え、錯体化学的手法を用いてヘム酵素反応中間体の合成を行った。今年度は、2002年4月6日から7月31日まで、米国、ルイジアナ州立大学、Kevin. M. Smith教授の下、新規反応中間体のモデル化合物錯体の創製を行った。そして、Smith研で合成したポルフィリン錯体を東邦大学・医学部・化学研究室に持ち帰り、酵素モデル錯体の休止状態について、1H NMR, 13C NMR、EPR、メスバウワー、SQUIDなどを用いて検討した。Smith研より持ち帰った錯体は、酵素反応を制御すると考えられている要因の一つであるヘムの非平面化においてのものであり、ヘムの非平面化が酵素反応中間体に及ぼす影響について、研究を行った。その結果、反応の休止状態である鉄の三価錯体においては、ポルフィリンの非平面化様式の違いが、ポルフィリンの性質に大きな影響を与えることを見いだした。この結果は、Chem. Commn.、Inorg. Chem.、Inorg. Chem. Actaに報告した。また、大きく非平面化したポルフィリン錯体を用いて、反応中間体の一種である鉄三価低スピンラジカルカチオンの合成にも成功した。この結果、ポルフィリン環の非平面化によって、鉄由来の不対電子とラジカルカチオン由来の不対電子が、反響磁性カップリングをすることを見いだした。(Chem. Commn.)
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