Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、劇場・ホールに関して設計・計画上の指針を得ることを目的としている。1 歌舞伎専用または主目的とする劇場(歌舞伎劇場)の視覚特性を解明し、新しい歌舞伎劇場の在り方を探る研究では、6つの典型的な歌舞伎劇場について、今年度さらに詳細な分析を行い、(1)視覚的に良い評価と云える座席数は劇場の大小にかかわらず500〜600席程度存在すること、(2)非常に悪い評価の座席数を少なくするには、プロセニアム幅や客席幅が小さいものでは700席、大きいものでは1000席程度が目安になること、などの設計・計画に有効な新たな指針を得た。2 国内の主要な12劇場・ホールのアプローチ・ホワイエの空間特性を明らかにし、劇場・ホールでの楽しみを一層豊かにする設計方法を探る研究では、今年度アプローチ・ホワイエ全空間の展開図を作成し、開口面積率・天井高などの物理量を計測し心理評価との相関分析を行った結果、(1)客席に至るまでのアプローチの天井高に変化をつけると連続感が得られやすいこと、(2)天井高5m以上で概ね開放感や立体感が得られること、(3)明るさと開口面積率では両者に関係が見られなかったこと、などを明らかにした。3 演劇を主目的とした中・小規模の劇場(演劇劇場)の空間特性に関する研究では、国内の特徴ある117の演劇劇場を舞台-客席関係・規模・形状・座席配置の観点から分類した上で、11劇場を調査・分析対象とし、舞台-客席関係を中心に心理、物理両面から分析した結果、(1)一体感やまとまり感などの評価は、サイドバルコニー席などを持つ重層した劇場での評価が高いこと、(2)演劇劇場では、演技者の動きを見る視野の前の観客による欠損が、座席での視覚的評価を下げる最も大きな要因となること、(3)演劇劇場でも断面形状の違いが視覚的評価にかなり影響すること、などの指針を得た。
All Other
All Publications (6 results)