Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
昨年度までにブラジル産巣分かれ創設タイプのアシナガバチ,Polybia paulistaのコロニー内血縁構造を分析するために必要な4種類のプライマーを準備できたため,昨年度の引き続き今年度はブラジルで採集したサンプルを分析した。本種のコロニー内メンバー間の血縁度は極めて低く,卵,幼虫,蛹,成虫それぞれの間で血縁度を計算したところ,その値は0〜0.2で,大半は0と統計的に有意な差はなかった。このことかは,本種のコロニーが血縁関係の薄い個体で構成されていることを意味している。本種は多女王制で,複数の巣盤を作って子育てをするが,巣盤間で未成熟個体間に血縁度が異なるかを比較したところ,差は見られなかった。このことから,女王は産卵可能な巣盤にランダムに産卵することができ,特定の女王が特定の巣盤の育室に産卵する傾向はなかった。したがって,女王は特定の巣盤をなわばりのように占有することはないと言える。また,巣分かれ創設型のアシナガバチではコロニーの成長にともなって女王数が変勤する現象(cyclical oligogyny)が知られているため,コロニーを採集した際にいた卵,幼虫,蛹,成虫のそれぞれの間の血縁度が変化したかをみたが,各発達段階間の未成熟個体の血縁度は変化しておらず,本種では女王数が変動する傾向は見られなかった。以上のことから,本種は南米のこれまでに調べられている多女王制種と比べると,1)極めて低い血縁度,2)女王の特定の巣盤への産卵の欠如,3)女王数の変動の欠如の点で,明らかにコロニー内の血縁構造は異なっていた。 私はこれらの結果の一部を平成14年7〜8月に北海道大学で開かれた国際社会性昆虫学会や同年11月に立教大学で開かれた動物行動学会において発表した。
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