Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
多様な体制を持つ多細胞動物が進化しえたのはどのような分子機構によるものだろうか?我々はこれまで、細胞や組織同士のシグナル伝達に加わる遺伝子の重複及び伝達するシグナルの多様性に直接かかわるドメイン構成の多様化は、カイメンの登場以前に既に完了していたことを明らかにした。今年度、これらの遺伝子が、最も原始的な多細胞体制を持つカイメンの生体内でどのような働きをしているのか手掛かりを得るため、カイメンを使用したin situハイブリダイゼーション法の開発を行った。カイメンの組織の脆さなど、いくつかの困難を克服した結果比較的発現量の多い遺伝子に関しては安定した結果を残せるまでになった。残念ながら、脊椎動物で神経軸索の誘導に関わるEphのカイメンのホモログなど、その発現に興味が持たれる遺伝子については必ずしも成功していないが、この技術は多細胞体制の進化の研究に有用であると考えられる。更に、シグナル伝達系にかかわる遺伝子が多様化した時期を限定する目的で、最も多細胞動物に近縁な単細胞原生生物である立襟鞭毛虫からも細胞や組織同士のシグナル伝達にかかわる遺伝子の単離を試みた。昨年までに、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たすチロシンキナーゼなど、動物多細胞化に関連する50種類以上の遺伝子の単離に成功した。今年度、こうした遺伝子を網羅的に単離することを目的とし、立襟鞭毛虫Monosiga ovataのcDNAライブラリを作成し、EST配列解析を行った(理化学研究所阿形研との共同研究)。そめ結果、立襟鞭毛虫と動物の祖先の分岐以前に、細胞間コミュニケーションに関わる遺伝子が既に高度に多様化していたことが明らかになった。更に、受容体型の遺伝子については、立襟鞭毛虫と動物とでリガンド結合部分の構造が全く異なっており、この違いが多細胞化を達成できたかできなかったかの分かれ道になった可能性が示唆された(投稿準備中)。
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