Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
理化学研究所で建設が進みつつある不安定核ビームファクトリー(RIBF)からの、核子あたり数百MeVの中間エネルギー不安定核ビームを水素標的に照射し、弾性散乱によって反跳された陽子の角度分布を測定する逆運動学の手法により、不安定核の構造を探る上での基礎的な情報である核子密度分布を系統的に抽出することができる。本研究では、反跳粒子のエネルギーと散乱角を高精度で測定する反跳粒子スペクトロメータ(RPS)の開発を進めている。反跳粒子の散乱角を必要な精度で測定するためには、水素標的から測定器までの間を真空に保ち、空気の多重散乱による角度精度の劣化を防がねばならない。大気中に置かれる測定器との間は、1気圧の気圧差に耐える強度を持ちながら、多重散乱による影響が測定に影響を与えない程度に薄いという、相反する要求を満たす膜で真空を遮断する必要がある。大気圧を支える細長い桟を5cmで張り巡らした金属製の窓を用意し、いくつかの種類・厚さの膜を検討して、本実験と同じ仕様の真空容器でテストした結果、充分薄い膜でも真空を保つことを確認した。また、昨年度のビームを使ったテストにより、RPSに必要な性能を達成できることが示されたNaI(Tl)カロリメータの試作機をもとに、本実験用の量産機を設計し、製作依頼を可能にした。我々は弾性散乱の解析に核媒質効果による相互作用の変化を取り入れた相対論的インパルス近似を開発し、用いている。^<58>Niの陽子弾性散乱データを用いて決めた核内での核子核子相互作用は、ρ中間子の効果を評価することが困難であったが、抽出された^<120>Snの中性子密度分布はρ中間子の影響をほとんど受けないことを確かめた。また、^<208>Pbの弾性散乱データもよく説明することを確かめた。これらの結果から、少なくともNiからPbに至る中重核においては、我々の手法による核子密度分布の抽出は有効であると思われる。
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