Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
イスラム原理主義や様々なフィリピンの過激な活動の活発により、当初予定していたミンダナオ島などを含めたゼブアノ語圏の広域調査が不可能になった。そのため、投稿論文の方向性が農民の経済生活の基盤を支える言語だけでなく、生活のあり方へとシフトした。自然環境の改変だけでなく、社会変化や社会保障のあり方も商品作物栽培を行う農民にとって重要だと思えるからである。そのため、過激派の活動の影響を免れている筆者の従来の調査地の農村を中心に2ヶ月間のフィールドワークを行った。筆者の従来の調査地は始めて6年になるが、最近の1〜2年の農村には大きな変化が見られた。もっとも大きな変化は、農民の中でミンダナオの移住という方向性は全く薄れていることである。その反面、山間地でも携帯電話など新たに出現した通信機器で、消息や市況の動向を探る動きが見られた。自家用バイクなどの個人的な移動手段も増えた。そのような消費志向が大きくなった反面、相変わらず病気などに対する社会保障が立ち後れている。それ故、家族が病気になった場合、大きな経済的負担となっている。そのため呪術やアンマ術などといった従来の、健康対策も廃れてはおらず、農村文化における非常に混交している。こういった、急速な近代化と近代化されていない部分の混交、もしくは混乱は今後ますます大きくなるであろう。ただ携帯電話やモータリゼンションの普及は、山間地の農村にまで救急車などの医療手段や消費手段、通信手段の普及を可能にした。それ故、今後は商品作物の変化のあり方だけでなく、従来見られなかった、このような農民の生活方法や思考形態の変化を定期的に観察し続ける必要が重要であると思われる。