Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の目的は、運動学習の細胞レベルの機構と考えられているシナプス可塑性、小脳長期抑圧(LTD)の発現分子機構を解明することである。分散培養した小脳プルキンエ細胞の微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の大きさを比較すると、高カリウム・グルタミン酸溶液(K/glu)処理によってLTDが誘導されることが報告されていた。昨年度までの研究により、新規転写に依存するLTD後期相の誘導はカルシウム・カルモジュリン依存性脱リン酸化酵素カルシニューリンによって抑制されていること、またカルシニューリンを不活性化するスーパーオキサイドを除去する薬剤によってLTD後期相誘導が阻害されることが判明した。そこで細胞内のスーパーオキサイドの量を測定したところ、LTD後期相を誘導するK/glu処理時に、プルキンエ細胞内でスーパーオキサイドの蓄積が起きることが明らかとなった。このことから、K/glu処理によって細胞内で蓄積するスーパーオキサイドがカルシニューリンを不活性化することにより、LTD後期相が誘導されると考えられる。以上の結果をまとめてEuropean Journal of Neuroscience誌に公表した。続いて、LTD後期相誘導に関わる遺伝子を同定するために小脳分散培養を用いてcDNAサブトラクションを行い、LTD後期相を誘導するK/glu処理によって発現量が増加するcDNA断片を複数単難した。そのうちには、機能未知の新規遺伝子が複数存在した。遺伝子発現部位をin situ hybridizationによって調べたところ新規遺伝子の一つが小脳プルキンエ細胞で強く発現しており、LTD後期相発現制御の一端を担う分子であることが期待される。
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