Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
シダ植物は形態形質が少ないため、従来1種だと考えられてきたものの中に実際には複数の隠蔽種が含まれていることがある。本研究では、まず、rbcL遺伝子の塩基配列情報のような分子情報を用いることにより、効率良く隠蔽種を見出し、種分化の研究をするにあたって適切だと考えられる最小単位を設定する。さらに、そのようにして見出した2倍体有性生殖種のごく近縁な種を用いて、生殖的隔離や生態的地位の分化等が起こる機構を調べることを目的とした。本年度はシマオオタニワタリについて、rbcL遺伝子の解析、酵素多型の解析、人工交配実験を行ない得られた成果について米国のウィスコンシン州で行なわれたBotany 2002(アメリカ植物学会)、及びオランダのライデンで行なわれたa3-day symposium in Leiden, The Netherlands(Plant species-level systematics)において口頭発表を行なった。本研究から、rbcL遺伝子は隠蔽種の探索において、効率の良い一次キーであり、シダ植物における種多様性を明らかにしていく上で、有効な情報を堤供しえることが示唆された。さらに、本研究では、近縁な組み合わせにおいては、雑種形成における非対称性がみられたり、雑種の形成数が低下したりすることが示された。遺伝距離は分岐してからの年代を反映していると考えられることから、シマオオタニワタリ類においては種分化の過程で雑種の形成率が急速に低下することが示唆される。このように、rbcL遺伝子の塩基配列を一次キーとして見出された隠蔽種を対象とすることにより、種分化の過程において、どのように生殖的隔離が進化するのかについて議論することも可能であることを示唆した。
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